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不妊治療はいくらかかる? 保険適用で体外受精や顕微授精は自己負担3割に

不妊治療はいくらかかる? 保険適用で体外受精や顕微授精は自己負担3割に

体外受精などの高額な不妊治療が、2022年4月から公的保険適用の対象になりました。保険適用になると、医療機関で自分が支払う医療費は原則3割で済むため、経済的な負担が少なくなります。夫婦全体の約4.4組に1組が不妊治療を受けたことがあると言われており、この記事をお読みの方の中には、不妊治療を検討している方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、不妊治療にかかる費用や保険適用の制度の概要、課題などについて解説します。

目次


  1. 4.4組に1組の夫婦が不妊治療を経験 子どもの13.9人に1人は不妊治療で誕生
  2. 保険適用になった「人工授精」「体外受精」、男性不妊の手術も
  3. 女性は43歳未満に年齢制限、回数にも上限
  4. 1回で70万円かかる治療も 保険適用で負担減に
  5. 保険適用で「良くなった」65%、「悪くなった」も73%
  6. 保険適用の制度を知り、自分に合った治療を

4.4組に1組の夫婦が不妊治療を経験 子どもの13.9人に1人は不妊治療で誕生

不妊に悩む夫婦は少なくありません。国立社会保障・人口問題研究所の2021年の調査によると、不妊を心配したことがある夫婦は39.2%に上り、夫婦全体の約2.6組に1組の割合でした。さらに、実際に不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)夫婦は22.7%で、夫婦全体の約4.4組に1組の割合でした。

一方で、不妊治療を経て生まれる子どもは年々ふえています。日本産科婦人科学会と厚生労働省の調査によると、国内で体外受精や顕微授精などの「生殖補助医療」により誕生した子どもは2020年に60,381人おり、これは全出生児(840,835人)の7.2%で、約13.9人に1人の割合になります。小学校の35人学級で考えると、1クラスで2~3人に上る計算になります。

保険適用になった「人工授精」「体外受精」、男性不妊の手術も

厚生労働省HP「不妊治療に関する取組」 出典:厚生労働省HP「不妊治療に関する取組」

不妊治療を受ける人がふえる中、菅義偉首相(当時)は少子化対策・子育て支援の看板政策として、不妊治療の保険適用を打ち出しました。

従来、不妊治療で保険適用されていたのは、不妊の原因を調べる検査や、卵管の癒着・精管閉塞といった不妊の原因となる病気の治療に限られていました。2022年4月から保険適用の範囲が大きく拡大され、下記の「一般不妊治療」「生殖補助医療」の二つの分野にも新たに保険適用されることになりました。

一般不妊治療

  • タイミング法:排卵のタイミングに合わせて性交を行うよう指導する
  • 人工授精:精液を注入器で直接子宮に注入し、妊娠を図る技術

生殖補助医療

  • 体外受精:精子と卵子を採取した上で体外で受精させ、子宮に戻して妊娠を図る技術
  • 顕微授精:体外受精のうち、人工的に注射針等で精子を卵子に注入するなど人工的な方法で受精させる技術
  • 男性不妊の手術:手術用顕微鏡を用いて精巣内より精子を回収する技術

また、第三者の精子提供や卵子・胚提供、代理懐胎による生殖補助医療は、そのあり方が国会で議論されているとして、引き続き保険適用の対象外となっています。

女性は43歳未満に年齢制限、回数にも上限

保険適用される不妊治療には年齢と回数による制限があり、まず治療開始時に女性の年齢が43歳未満であることが必要です。高齢になるにつれ妊娠率が下がることが理由とされています。

また、回数制限は次の表の通りです。

初めての治療開始時点の女性の年齢

回数の上限

40歳未満

通算6回まで(1子ごとに)

40歳以上43歳未満

通算3回まで(1子ごとに)

出典:厚生労働省HP「不妊治療に関する取組」

なお、男性の治療に年齢制限はありません。

1回で70万円かかる治療も 保険適用で負担減に

不妊治療にはどれくらいの費用がかかるのでしょうか。2020年に内閣府が開いた会議の資料によると、1回の治療にかかる平均額は次の通りでした。

  • タイミング法:数千~2万円
  • 人工授精:1万~3万円
  • 体外受精・胚移植:20万~60万円
  • 凍結胚・融解移植:20万~60万円
  • 顕微授精:30万~70万円
  • 顕微鏡下精巣内精子採取術:25万~40万円

出典:内閣府「第3回 選択する未来2.0」参考資料

不妊治療を長期間続ける場合、治療費がかなりの額に上ることがわかります。従来も一部の治療には助成制度がありましたが、保険適用にともなって治療費の自己負担が原則3割になったので、負担は大きく減ることになりました。

保険適用で「良くなった」65%、「悪くなった」も73%

不妊治療の保険適用が始まって、多くの人の経済的な負担が減った一方で、課題も出ています。

不妊に悩む人たちを支えるNPO法人「Fine」は2022年7~10月、「保険適用後の不妊治療に関するアンケート 2022」を実施し、不妊治療などを受けているか、今後受ける予定の約2千人が回答しました。

アンケート結果によると、保険適用になって「良くなった」と感じることがある人は65%でした。その理由を尋ねると、多かった回答は「経済的に治療が始めやすくなった」(67%)、「支払う医療費が少なくなった」(66%)、「心理的に治療が始めやすくなった」(42%)でした。「自由診療の際には診察だけで 4,000 円などザラだったので、300 円で済んだときには感動した」などの回答がありました。

一方で、保険適用になって「悪くなった」と感じることがある人は73%に上りました。その理由を尋ねると、多かった回答は「医療機関が混雑して、待ち時間がふえた」(46%)、「保険適用の範囲がわかりづらい」(44%)、「経済的負担が大きくなった」(33%)でした。回答の中には、希望する治療が保険診療の対象になっておらず、制度改正に合わせて従来の助成金がなくなったことにより経済的な負担が増したというケースもありました。保険適用がすべての人にプラスになっているわけではなく、なお改善が必要な点もありそうです。

保険適用の制度を知り、自分に合った治療を

多額の治療費がかかる不妊治療は経済的な負担が大きく、保険適用で負担が軽くなるケースは多いでしょう。保険適用の制度を知り、自分に必要な治療につなげられることが望ましいと言えます。ただ、現状の制度には課題もあり、今後の制度改正にも注目したいところです。

また、保険適用によって「親や友人から不妊治療を受けるようにとのプレッシャーを感じる」という声も上がっています。子どもを望む人、望まない人それぞれの選択を尊重し、後押しできる社会にできればいいですね。

▼参考資料

  • 厚生労働省「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」
  • 厚生労働省HP「不妊治療に関する取組」
  • NPO法人Fine「保険適用後の不妊治療に関するアンケート 2022」

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