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所得税は年収がいくら以上だと払わなければならない?103万円の壁、130万円の壁

所得税は年収がいくら以上だと払わなければならない?103万円の壁、130万円の壁

個人が納める税金である所得税。概要はなんとなくわかっていても、源泉徴収という形でいつの間にか給与から差し引かれていて、全容を把握している人は少ないのではないでしょうか。ここでは所得税の基本的な仕組みと、いわゆる「103万円の壁」「130万円の壁」について解説していきます。

目次


  1. 所得税は年収がいくら以上だと払わなければいけない?
  2. 103万円以外の年収の壁
  3. 世帯によって全く違う意識するべき年収の壁 「年収の壁」を打破するために
  4. 還付で事実上、所得税がかからないケースとは?
  5. 意識しすぎる必要はない年収の壁と利用するべき所得控除

所得税は年収がいくら以上だと払わなければいけない?

所得税は年収がいくら以上だと払わなければいけない?

所得税は、課税所得に対して、段階的に定められた税率をかけて金額が確定します。まずは課税所得について正しく理解しましょう。

「額面給与」「課税所得」「手取り」すべて違うのはなぜ? 所得税が課される仕組み 

「額面給与」「課税所得」「手取り」、これらはそれぞれの金額が異なります。「額面給与」は「収入」と同じで、これは基本給と残業代や通勤手当など、支払われるすべての収入を合算したものです。言い換えると、これから述べる税金の源泉徴収や社会保険料が差し引かれていない状態の金額です。

この「額面給与」から健康保険や雇用保険などの社会保険料、所得税や住民税を差し引いて、実際に支払われる金額がいわゆる「手取り」です。

これに対し、「課税所得」は所得税を算出するためにすべての所得から「所得控除」を差し引いたものです。

「額面給与」はすべての収入の合計で、そこから実際にもらえるお金が「手取り」、所得税を算出するために所得控除額を差し引いたものが「課税所得」ということですね。

「課税所得」と「手取り」は、どちらも「額面給与」から差し引いて算出されますが、その差し引きされる内容が異なるため、金額が変わります。

「所得控除」とは

「課税所得」を算出するために所得から差し引く「所得控除」は、納税者のそれぞれの事情を考慮し、負担を軽減するために設定されています。

たとえば、サラリーマンの所得控除で額が大きい「給与所得控除」は、業務のために個人で購入した文房具や交通費など、個人事業主や法人では経費として所得から控除できるものを、サラリーマンでも概算して大体の金額で控除してくれるものです。

所得控除には、所得のあるすべての人が受けられる基礎控除をはじめとして、社会保険料控除、配偶者控除や扶養控除など、全部で15種類が存在します。

103万円の壁

所得控除の中で、基礎控除と給与所得控除の最低額を合わせると103万円です。
そのため給与所得者は、年収103万円以上の所得があると、所得税が発生します。

逆に言うと、年収103万円以下の場合は、所得税は発生しません。

また、世帯の中に主な所得者(=世帯主とします)と扶養家族がいる場合、子どもやその他の扶養家族の年収が103万円を超えると、世帯主の扶養控除から外れ、世帯主の税額が上がります。ただし、配偶者の場合は150万円までは特別控除が受けられます。

103万円以外の年収の壁

103万円以外の年収の壁

年収103万円は、所得税が発生する最低ラインですが、それ以外にも年収の壁と言われるラインがいくつかあります。

106万円の壁

年収106万円は、社会保険への加入義務が発生する最低金額です。ただし、学生は対象外です。また、条件がいくつかあるので、対象になるかをしっかり確認しましょう。

130万の壁

年収130万円は、すべての人が世帯主の社会保険から外れてしまう収入額です。

収入が130万円を超えると、配偶者や扶養家族自身が社会保険に加入する必要があります。

150万円の壁

年収150万円は、配偶者特別控除の制限が始まるラインです。150万円までは配偶者特別控除が満額で受けられますが、150万円を超えると段階的に控除額が減っていき、配偶者の年収が201万6千円以上は受けられなくなります。

世帯によって全く違う意識するべき年収の壁 「年収の壁」を打破するために

世帯によって全く違う意識するべき年収の壁 「年収の壁」を打破するために

いくつかある年収の壁をみてきましたが、世帯主の年収と家族構成・属性によって、意識すべき年収の壁は変わります。いくつかのパターンに分けて、注意すべきポイントを説明していきます。

全世帯が意識するべき年収の壁

子どもなど、配偶者以外の扶養家族の場合は、103万円の壁を超えると扶養控除がなくなり、仮に税率が約30%だとすると、世帯主の所得税額が約10万円高くなるので、注意が必要です。

また、配偶者やそれ以外の扶養家族も、社会保険への加入義務が発生する106万円の壁・130万円の壁では、社会保険料に入ると15万円前後負担が増えるので、その点も十分に加味しましょう。

世帯主の年収が1,095万円以上

世帯主の年収が1,095万円以上になると配偶者特別控除が減額となり、1,195万円以上になると配偶者特別控除がなくなります。1,095万円からの配偶者特別控除の減額分と配偶者の年収の増額分を比較すると後者の金額のほうが大きくなるため、年収1,095万円以上の世帯主の配偶者は、年収の壁はあまり意識しなくても良いでしょう。

世帯主の年収が1,095万円未満

世帯主の年収が1,095万円未満の場合は、配偶者特別控除を満額受けられる可能性があるので、配偶者は150万〜201万円の壁を意識する必要があります。

配偶者の収入150万円から段階的に削減されていき、201万円を超えると税負担が増すことになるので、収入が150万円を超える場合は、配偶者特別控除が減額される分、増える税負担との兼ね合いを考えるようにしましょう。

還付で事実上、所得税がかからないケースとは?

還付で事実上、所得税がかからないケースとは?

年収の壁で意識される「配偶者特別控除」や「社会保険料控除」以外にも所得控除にはたくさんの種類があります。

これらを利用して課税所得が0になると、所得税を支払わなくて良いことになります。

サラリーマンの場合、会社で事前に所得税が引かれている場合も、確定申告で対象になる所得控除を申告すると、すでに納めた税金から払い過ぎてしまった金額が還付されます。

会社の年末調整では加味してもらえず、必ず自分で確定申告を行わなければ適用されない所得控除もあるので、しっかりと確認しましょう。

確定申告で申告すべき、代表的な所得控除をいくつか紹介します。

医療費控除

年間の医療費が10万円(所得200万円以下の場合は総所得の5%)を超えた場合、超えた分の医療費が上限200万円まで控除されます。

寄附金控除

税金対策としてよく話題に上がる「ふるさと納税」。これも、この寄附金控除を利用したものです。控除の対象となる特定の団体に寄附を行った場合、寄附金から2,000円を引いた額が控除されます。

ふるさと納税では、返礼品をもらえる場合が多く、実質2,000円で返礼品がもらえて、控除もされるため、毎年とても人気です。

意識しすぎる必要はない年収の壁と利用するべき所得控除

所得税を決める課税所得を算出するには、さまざまな控除が存在し、控除が受けられなくなる金額のラインは「年収の壁」と呼ばれることなどを説明してきました。

年収の壁は、世帯の構成や年収などによって、本当に壁になるか否か、さまざまなケースがあります。年収の壁に翻弄されず、年末調整だけでは申請できないさまざまな所得控除があることを理解して、所得控除を使った工夫も検討しましょう。

▼参考情報

  • 国税庁「所得税の仕組み」
  • 国税庁「No.1130 社会保険料控除」
  • 国税庁「No.1195 配偶者特別控除」
  • 国税庁「No.1120 医療費控除」
  • 国税庁「住宅ローン控除を受ける方へ」
  • 国税庁「No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」

 

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