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膠原病の検査や治療費用はいくら?血管炎で難病認定された当事者が語る

明るい病室と点滴

膠原病の検査や治療にはどのくらいのお金がかかるのでしょうか?

膠原病は体を病原体などから守ってくれる免疫システムが誤作動を起こすことにより、自分の体を攻撃してしまう病気です。

 

「全身性自己免疫性疾患」とも呼ばれ、全身のあらゆる機能に障害をもたらします。診断の遅れによっては命に関わることもある怖い病気です。

難病に罹患すると、その後の治療も継続的に行っていかねばなりません。そのため治療費がどのくらいかかるのかと言う不安も出てくるでしょう。

 

前回に引き続き、膠原病のひとつであり、難病認定されている「多発血管炎性肉芽腫症」で闘病を続けるMasayaさんにお話を伺います。

今回は検査や治療にかかる費用について、経験したことをお話しいただきました。

目次


  1. 膠原病の検査と治療にかかる費用
  2. 助けになった社会保障制度などのサポートシステム
  3. 膠原病とともに生きる
  4. 健康な人でも突然かかる可能性がある

膠原病の検査と治療にかかる費用

街中を歩く男性の足

膠原病のひとつ、多発血管炎性肉芽腫症(以後GPAと略)に罹患してから、苦労することがたくさんありました。
その中でも特に不安だったことは、お金の問題です。

ご想像がつくかと思いますが、入院している間は仕事ができないため給与収入がありません。しかしながら、治療費はかかります。
私は以前、生命保険の営業をしていたこともあり、この治療費については、だいたい予想がついていました。しかし、実際の費用は想像していたよりも高額でした。

具体的に、どのような場面で治療費がかかってくるのか。
血管炎の治療では、診断確定、寛解導入、寛解維持の3段階に分かれて費用が発生していきます。詳細にかかった費用などをご紹介します。

診断確定されるまでにかかる治療費

GPAの診断が下るまで、耳鼻科と内科を往復していました(耳鼻科3回、内科2回)。
その間の費用は3割負担(現役の人の負担と同様)で約12,000円です。高額ではありませんが、ここでかかった費用はGPAの治療とは関係なく、あくまでGPAと診断確定されるまでの道のりにかかる費用です。

この期間は、副鼻腔炎やコロナ、アレルギー性鼻炎や感染症など、GPAとは異なる病気と判断され治療を続けていました。
診察を受け、薬の処方もされていますが、膠原病であると判明していないため、根本的な治療には向かっていない状態です。

私の場合は数回の通院で、運よく現在かかりつけの、膠原病リウマチ内科へ移ることができました。しかし、膠原病の患者の中には数年~10年近く、原因不明の病気として治療を続けている方もいます。

また、近隣に大きな病院が無く病状も悪い場合は、車やタクシーで大都市の病院へ通うケースも出てきます。
そうなると診断確定前の費用は何倍にも膨れ上がってしまいます。このように膠原病は、診断が難しいことから、本格的な治療が始まる前から費用がかかるのです。

寛解までにかかる治療費

私の場合、かかりつけの病院を受診した時には、自力で歩けないほど症状が悪化していて、緊急入院することになりました。それから連日検査を行い、数日後にGPAと診断されます。
その結果、4月下旬~6月初めまでの44日間入院しましたが、入院費は本当に高額になりました。内訳は以下の通りです。

膠原病の寛解までの治療費

健康保険にある高額療養費制度という素晴らしい仕組みのおかげで、1か月の治療費は最大で57,600円で済んでいます(上限額は、年齢や所得によって異なります)。
しかし、この上限は月ごとにリセットされてしまいます。月初めから月末までの入院なら1回分の費用で済みますが、私は3か月をまたいでいたので、結局3か月分の費用がかかりました。

そして、入院生活で一番高額だったのは個室代です。もちろん、大部屋へ入院すればこの費用は発生しません。しかし、安いからといって簡単に大部屋を選べるわけではないのです。
部屋の入れ替えのタイミングで、1日だけ大部屋に泊まったのですが、非常に大変でした。

入院中のお部屋

私が入院した病院は、重症な患者や緊急性の高い患者が入院する「急性期病院」でした。その場合、夜中に看護師の方が定期的に見回り、ナースコールがひっきりなしに鳴っていて、音に敏感な方だと全然眠れません。

それにベッド周りの空間が狭いので、家族との電話も難しい状況です。また、GPAの治療では免疫力を下げる薬が処方されるため、感染症に罹患するリスクが高まります。
感染症に罹れば、症状が悪化する可能性もありますし、場合によっては命の危険にも晒されます。こういった理由から、私は個室での入院生活を選びました。

このような差額ベッド代以外にも、家族が病院に来るときの交通費や、気晴らしに買ってきてもらった本など、闘病中の生活の質を高めるための費用もかかってくるので、病気の治療代だけを考えていれば良いというわけではありません。

寛解維持のためにかかる費用

無事に退院しても、治療は終わりません。
退院してからしばらくは2週間に1回の通院が必要で、何度も病院を行き来しました(2024年3月現在は2か月に1回のペース)。そして、この病気は治療が終わることはないので、これから先もずっと病院に通い続ける必要があります。これを寛解維持療法と呼びます。

また、血管炎の治療として使われるステロイドは副作用が強く現れます。私の場合、腹痛になることが多く、何度か病院に救急搬送されたこともあります。
1回の通院費はそれほど高額ではありませんが、この先も治療を続け、再燃の可能性も考えると、寛解維持にかかる費用は相当大きな金額になっていきます。

2021年の通院費 約70,000円
2022年の通院費 約90,000円
2023年の通院費 約80,000円

このように治療に関するお金の悩みは尽きません。

助けになった社会保障制度などのサポートシステム

指定難病受給者証

ここまでお伝えした通り、高額療養費制度により、ある程度医療費の負担を軽減できるものの、膠原病には継続的な治療が必要なため、長期にわたると負担が大きくなることは避けられません。

では、難病に罹患した際に支援してくれる制度にはどのようなものがあるのでしょうか。
ひとつは難病認定された際の健康保険制度とは別の公的な支援です。もうひとつは、民間の医療保険です。それぞれどの程度役立ったかについてお話しします。

難病認定と公的な支援制度

膠原病をはじめとするいくつかの難病は「指定難病」と呼ばれます。そして、一定の条件を満たしている患者は、高額療養費制度よりも医療費負担が軽減される制度があります。これを難病医療費助成制度といいます。

指定難病医療費助成制度を受けるには、特定医療費受給者証が必要です。
難病指定医が作成した臨床調査個人票(診断書)等を都道府県・指定都市の窓口に提出し、医療費助成の申請を行います。

特定医療費受給者証の受給条件
(1)病状の程度が認定基準に該当するとき
(2)認定基準に該当しないが高額な医療の継続が必要な人

私は特定医療費受給者証を受給できたので、月々の医療費は最大でも1万円になりました。それまで5万円以上かかっていた医療費が1/5まで軽減されるので、非常にありがたい制度です。しかし、この制度は毎年更新する必要があります。また、症状が落ち着いた患者は対象から外れてしまいます。

民間の医療保険

私は入院1日につき5,000円受け取れるタイプの医療保険に加入しています。
したがって、入院時は44日×5,000円の22万円の入院給付金を受け取ることができました。1日分の個室代と同じ額を受け取れるので、安心して個室での入院を選べたのです。

医療保険はもともと治療費を補填する意味合いが強いものですが、給付金があることで個室を選ぶことができ「落ち着いた環境」で治療に専念できました。心の負担を軽減できることは治療にも大きなメリットがあると感じました。
しかし、長期入院を経験して、民間の医療保険へ加入する際の注意すべきポイントも見えてきました。

1つ目は、ずっと給付金が受け取れる訳ではない点です。
私の加入している医療保険は1回の申請で受け取れる入院給付金は最大で60日、それ以降は退院してから180日経過しないと受け取れません。

幸いにも、私は退院してから次の検査入院まで180日以上空く治療計画であったため、この免責期間には該当しませんでした。
今後も同じような治療が続けば、継続して給付金を受け取ることができます。

2つ目は、意外と保障額(給付金額)が不足するという点です。
「医療保険の保障額は必要最低限でよい」というキャッチコピーをよく見かけますが、実際に入院すると、それだけでは足りないことがよくわかりました。入院している最中は働けないので十分な収入は入りません。

しかし、光熱費を始めとする生活費や税金は容赦なく請求されます。さらには、給付金を受け取るためには診断書などの書類作成も病院へ依頼することになります。自分が思っているよりも多めに保障がないと、手元資金が不足して困ってしまう場面が多いのです。

さらに、一度病気に罹患すると新たに保険に入ることが難しくなります。これは生命保険や医療保険に加入する際は原則として告知が必要になるからです。
医療保険選びは慎重に進めなければいけないなと思いました。

膠原病とともに生きる

カフェテーブルに置かれたコーヒーカップ

GPAと診断された後、私の人生は大きく変わりました。
キャリアプランの変更だけでなく、ライフプランの見直しも必要です。

ストレスからくる病気への悪影響や通院治療のため、これまでと同じ仕事を続けられなくなりました。また、感染症に罹りやすくなることから、このリスクを避けるために、これまで自由に行くことができていた場所に行くことも難しくなりました。
しかし、それでも前向きに考え、得るものがあったはずだと考えるようにしています。

難病になることで失ったもの

営業の仕事が続けられなくなりました。
膠原病はストレスにとても敏感に反応してしまうので、営業が失敗したときなどは如実に症状が出ます。そうすると1~2日くらいは休まないといけないので、日程を変更する必要が出てきます。

このように突発的に日程変更を繰り返すと、タイミングを逃してしまって契約が遠のき、さらにストレスがたまります。
退院してから一度営業職にチャレンジしてみましたが、結局数か月でやめることになりました。学校を卒業してからずっと営業をしてきたので、いきなり別職種へ転職するのは勇気がいりました。

難病になることで得られたもの

難病になって、自分自身を見つめ直すことができました。正直、今までは仕事をしてお金を稼いで、不自由のない暮らしをすることが重要だと思っていました。
しかし、病気になって今まで通りの収入が得られなくなり、ライフプランを再度見直すと、意外と無駄が多かったなと気づくことができました。

いろいろと工夫をしながら生活すれば、お金以外の充実感を得ることができます。
それに加え、家族との時間を大切にするきっかけにもなりました。妻と2人で暮らしていますが、病気を機に会話する時間が増えたと思います。1人だけでは乗り越えることができない病気なので、妻に感謝しながら毎日を大切に過ごせています。

周りの方へのメッセージ

GPAという病気は、日本には3,000人程しかいない、希少な疾患です。しかし、これは難病医療費助成制度を受けている人の総数なので、本当はもっと多くの人が悩んでいると思います。
私も治療に悩んでいる1人です。今はインターネットやSNSなどで情報があふれている時代ですが、そんな中でもこの病気の情報はあまりありません。

医師や周りの人だけでなく、企業・NPO法人など、適切な支援をしてくれる場所はきっとあります。ですので、決して1人で抱え込まないでください。きっと助けになるところがあるはずです。
また、膠原病ではない方にも伝えたいことがあります。この病気は、いつ、誰が、どういった理由で罹患するか分かりません。つまり、誰でもなる可能性はあるのです。

私も、まさか自分が膠原病になるとは夢にも思いませんでした。皆さんも、決して他人事とは思わずに、膠原病や難病について、知識を持っておくことは重要だと思います。
そして、難病の方を見かけたら、少しでも優しくしていただけるとうれしいですね。

健康な人でも突然かかる可能性がある

将来に悩みを抱える男女

今回は、GPAで闘病をしているMasayaさんに、検査や治療にかかる費用についてお話を伺いました。
難病には完治と言う考え方がありません。治らないから難病でもあります。寛解を維持させていくためには、適切な治療を受けることと同時に、精神的な安定を保つことが重要だということがわかります。

難病に限ったことではありませんが、ストレスは万病の元であり症状を悪化させる要因でもあります。
その点、健康保険制度や難病医療費助成制度による国の支援は精神的ストレスを和らげ、QOLを高める役割を担っています。
これに加え、民間の医療保険に加入しておくことも大きな安心につながるのではないでしょうか。

誰もが、そして働いている時期であっても罹患する可能性がある膠原病。
膠原病と言うと女性の罹患率が高い印象がありますが、今回のGPAのように男女ともに罹患割合が変わらないものもあります。

健康なうちから準備できることはしておくことが将来の安心につながるのではないでしょうか。もし、不安を感じるようであれば一度ソナミラのコンシェルジュにご相談してみてはいかがでしょうか。相談は無料です。

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