KNOWLEDGE
保険とお金のキホン
- 1-1.入院・手術への備え~医療保障の検討時に知っておきたいこと~
- 1-2.入院・手術への備え~医療保障の現状~
- 1-3.入院・手術への備え~医療保険に関する一般知識~
- 2-1.三大疾病への備え~三大疾病保障の検討時に知っておきたいこと~
- 2-2.三大疾病への備え~三大疾病保障の現状~
- 2-3.三大疾病への備え~三大疾病に関する一般知識~
- 3-1.就業不能保障~就労不能保障の検討時に知っておきたいこと~
- 3-2.就業不能保障~就業不能保障の現状~
- 3-3.就業不能保障~就労不能に関する一般知識~
- 4-1.介護保障~介護保障の検討時に知っておきたいこと~
- 4-2.介護保障~介護保障の現状~
- 4-3.介護保障~介護保障に関する一般知識~
- 5-1.遺族保障~遺族保障の検討時に知っておきたいこと~
- 5-2.遺族保障~遺族保障の現状~
- 5-3.遺族保障~相続対策の現状~
- 5-4.遺族保障~遺族保障に関する一般知識~
- 6-1.資産形成~資産形成を考える際に知っておきたいこと~
- 6-2.資産形成~新NISAとiDeCoとは?~
- 6-3.資産形成~資産形成と生命保険~
1-1.入院・手術への備え~医療保障の検討時に知っておきたいこと~
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民間の医療保険を検討する際、入院給付日額をいくらにすべきかを悩むケースはよくあります。
もし、長期間にわたって入院をすることになれば、入院時の自己負担額もそれだけ多くなることが予想されます。
では、平均的にどのくらいの日数入院することになるのでしょうか。
<グラフ>平均在院日数の推移(総合病院、精神病院、専門病院での入院含む)厚生労働省の「医療施設調査・病院報告 平均在院日数」によると、退院患者の平均在院日数は27.3日となっています。
ここ20年ほどで3割近く入院日数が短くなったことになります。
昨今、治療は入院から通院に移ってきているという現状があります。ですから、治療費を補填する目的で医療保険を比較検討する際は、入院給付金だけでなく通院給付金なども合わせて総合的に検討するようにしましょう。
特に、十数年前に医療保険の提案を受けた方は、入院給付金に重点をおいたものに加入されているケースもあります。
現在ご加入の内容が、今の医療事情や健康保険制度にマッチしているものかどうか一度確認してみましょう。 -
入院時にかかる費用の分布を見てみると、20万円未満が約7割を占めます。ただし、疾病の種類によっては入院が長期化することもあり、個室等の利用による費用の負担増が予想されます。
<グラフ>直近の入院時の自己負担費用
また、退院後のリハビリや休職中の収入減を含めると治療費以外にも費用がかかることが考えられます。
医療保障の商品は健康増進型などの保険、認知症を保障する保険、入院時の自己負担に連動して給付金が受け取れる保険など多様化しているため、それぞれの保障が必要かどうかをしっかりと見定めて選ぶようにしましょう。
特に見落としがちなのは、入院と通院が併用された治療に移ってきていることです。例えばがんの治療では、通院で放射線治療を受ける日々が何クールも続きます。
このようなケースは1回の入院にカウントされません。しかし、仕事を制限しながら交通費をかけて通院するという点では入院よりも負担が増す部分もあります。
このような状況で、どのような保障が役立つのか確認してみましょう。 -
差額ベッド代とは、入院時に患者側の希望で個室等に入室した場合にかかる費用で、正式には「特別療養環境室料」といいます。
全額が自己負担となりますが、約71%の方が差額ベッド代を負担してでも「個室や少人数部屋」を希望しています*。
個室等に入室することで患者の入院中のストレスが減り、治療経過にも好影響を与えることが期待される一方で、入院日数が長くなると差額ベッド代は大きな負担となっていきます。
* エフピー教育出版 令和3年「サラリーマン世帯生活意識調査」より作成
<グラフ>一人部屋の差額ベッド代の推移
上記の表は一人部屋における差額ベッド代の平均額の推移です。年々平均額が上昇していることがわかります。
「個室に入院なんて贅沢をするつもりはない」と考える方もいるかもしれません。
しかし、健康な状態で、健康な人と4人部屋で過ごすわけではないことをしっかりと考えておく必要があります。
4人部屋というのは1つの部屋にベッドが4台置かれていて、それぞれをカーテンで仕切られている部屋です。同じ部屋になる人は選べませんし、生活音や匂いというものは漏れ伝わってくるものです。話し声やいびき、痛みに耐える声、ため息が聞こえてくることもあります。
また下半身が動かない等の理由でベッドの上、もしくは簡易トイレで用を足さなければならない場合はカーテンの間仕切り一つで行わなければなりません。
長く入院するときこそ、よりよい環境で治療に専念したいと考えることは普通のことかもしれませんね。もしも入院した際は個室に入院したいという方は、差額ベッド代を賄える様、医療保険への加入を検討してみてはいかがでしょうか。 -
入院時の治療費以外の自己負担には、食費、差額ベッド代、日用品・衛生用品等があります。これらの費用は入院日数に比例して金額が大きくなっていきます。
例えば、脳梗塞で51日入院した場合では、約55万円の費用がかかると想定されます。
<グラフ>脳梗塞で51日入院した場合の自己負担額の例
【内訳】
■病院食:70,380円(3食1,380円×51日分)
病院での食事代は一般的な所得区分では1食460円と決まっています。3食で1日1,380円、51日で70,380円の出費となります。
■お見舞いに来る人の交通費:21,000円(往復600円×35回)
長期入院となればご家族も心配し、お見舞いに来てくれることも多いでしょう。電車で来た場合は交通費がかかります。電車賃が片道300円だとして、1週間に5回くらいお見舞いに来ると仮定すると、35回分の交通費21,000円がかかることになります。
■差額ベッド代:424,422円(1日8,322円×51日分)
差額ベッド代は病院によって単価が異なります。一人部屋の全国平均額は1日8,322円となっており、入院期間中継続的に利用した場合は424,422円となります。
■日用品・衛生用品:30,600円(600円×51日分)
また、日用品や衛生用品にもお金がかかります。ティッシュや水などのほか、調味料や嗜好品などが必要なケースもあります。
他にも治療によっては免疫力が低下するために、できるだけ新しいものを食べるように気を付けたり、薬の副作用で頭髪が抜けた際のウィッグ、骨折した際のコルセットなどにもお金がかかります
【補足】
● 金額は脳梗塞で51日入院したと仮定した場合に、必要になる出費をまとめたものです。差額ベッド代等、各項目の単価にかける日数はあくまでイメージです。
● 交通費や差額ベッド代、日用品等にかかる費用には個人差があります。
● 治療以外にかかる費用を考える際の目安としてご覧ください。
治療費に関しては健康保険で補填できる部分もありますが、今回ご紹介したような治療費以外のお金(健康保険が適用されない)も結構かかる可能性があります。
医療保険から給付された給付金は、こういった費用に充当することも可能です。治療費だけに焦点をあてず、治療費以外のお金をどうやって準備するのかも、一度検討してみましょう。
1-2.入院・手術への備え~医療保障の現状~
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民間の医療保険の加入率を世帯ごとにみると、医療保険や医療特約が93.6%、がん保険やがん特約が66.7%、特定疾病保障保険や特定疾病保障特約が48.4%となっています。
<グラフ>民間の医療保険の世帯加入率医療保険の、それぞれの特徴を整理すると次の通りです。
■ 医療保険・医療特約
病気やケガで入院・手術をした際に給付金を受け取ることができる保険です。入院時の差額ベッド代や食事代など、公的医療保険で賄えない部分を補填する目的で加入します。がん保険・がん特約、特定疾病保障保険・特定疾病保障特約と比べると、原則すべての病気やケガが支払いの対象となるため給付金支払の範囲は広いと言えます。
■ がん保険・がん特約
がんに罹患したときに受け取ることができる保険です。がんと診断された時点で受け取ることができる診断給付金や、通院時に給付される通院給付金などがあります。ただし保険会社や保険種類によって、上皮内新生物は対象外となるなど、給付金支払の範囲が異なります。がんに罹患した際は、治療期間も長期になりがちですので、その部分を重点的に保障するための保険です。
■ 特定疾病保障保険・特定疾病保障特約
悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患により被保険者が所定の状態などになったときに、特定疾病給付金を受け取れる保険です。三大疾病保障や生活習慣病保障(成人病保障)とも呼ばれています。また、よくある事例として、心疾患のうち狭心症が給付対象にならないなど、保険会社や保険種類によって給付範囲が異なります。日本人の死因の約46%を占める三大疾病を重点的に保障するための保険です。
上記以外にも、女性疾病保障保険などの保険商品が販売されています。女性疾病とは男性にはない子宮や卵巣、乳房などにかかる病気のことです。たとえば、妊娠や出産時の異常分娩や早産・流産、帝王切開などが対象です。また、子宮筋腫、乳がん、卵巣がん、子宮頸がんなども女性疾病に入りますが、女性疾病の明確な定義はありません。保険会社や保険商品によって異なります。
それでは、どの医療保険に加入すべきなのでしょうか。そもそも、公的医療保険がある中で、更に民間の医療保険に加入すべきなのでしょうか。
この質問の答えに正解はありません。各自のライフスタイルや考え方によって異なります。公的医療保険でカバーできる部分はどういう部分なのか、不足部分に対する自分の考え方はどうなのか、ということをしっかりと検討して、納得して医療保険に加入するようにしましょう。
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医療保険の被保険者がケガや病気で入院した際に、保険会社から受け取ることができる給付金のことを指します。
入院給付金は、医療費の自己負担分や入院時の食事代や差額ベッド代に利用されます。また、働けない期間の逸失利益の補填としても活用できます。
<グラフ>入院給付金額の決め方入院給付金額(日額)の例として、
● 会社員:日額5,000円~10,000円
● 自営業者:日額10,000円~15,000円
など、自営業者には傷病手当金がありませんので、その分を多く準備するケースが考えられます。
入院給付金は、入院日数に応じて支払われます。このとき、入院初日から支払いが開始される場合や、一定の日数を超えた入院から支払いが開始される場合などがあります。
また、支払限度額は、1入院あたり60日または120日分、通算1,000~1,095日分で設定されています。
このように入院給付金額だけでなく、入院給付金の支払条件や支払期間なども、保険商品の内容によって異なるため、保険契約時に内容をよく確認しましょう。
そして、もし自分が入院した際にいくら必要なのかを考え、それに合った保険に加入するようにしましょう。
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医療保障の入院給付日額は、現役世代であれば日額8,600円から10,400円が平均的な額となっています。一つの目安にしてみましょう。
<グラフ>世帯主の疾病入院給付金日額(全生保)このように現役世代の入院給付金日額は、8,600~10,400円となっています。もし、10,000円の入院給付日額の医療保険に加入しており、入院初日から給付金が支払われる場合であれば、10日間入院すると約10万円の入院給付金が支払われます。このときの給付金は非課税で受け取ることができます。
では、入院が長引くことで、給付金の支払限度額を超えてしまうことはないのでしょうか?
生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(2022年度)」によると、直近の入院時の入院日数は平均で17.7日です。ほとんどの疾病の入院期間は60日以内であり、平均の入院日数は短くなる傾向があります。
ただし、脳血管疾患などのように、入院の長期化が予想される疾病もあります。それらの疾病が心配な方は、特定疾病保険や特定疾病特約を追加で検討してみてもよいでしょう。
また近年、特にがん治療においては、入院しての治療から通院での放射線治療や抗がん剤治療へ移ってきています。その結果、通院しながら治療を行うケースも増えています。医療保険を検討する際は、入院給付金だけでなく、通院給付金が支払われるかどうかなどにも注意して保障内容を比較するようにしましょう。
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1-3.入院・手術への備え~医療保険に関する一般知識~
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医療保険に加入している人が、ケガや病気の治療のための手術を受けたときに、保険会社から支払われる給付金です。
保険会社や保険商品にもよりますが、必ずしも入院を伴うことが条件になっているわけではなく、日帰り手術でも受け取れるケースがあります。
手術給付金額は、一律○円と決まっている「固定額タイプ」のものと、入院給付日額に所定の倍率をかけて算出する「倍率タイプ」のものがあります。
<グラフ>手術給付金の2つのタイプ■ 固定額タイプ
「日帰り手術で5万円」や「入院手術で10万円」といったように、給付金額があらかじめ決まっているタイプです。入院の有無により給付額に差が設けられている場合があります。一般的には日帰りでの手術よりも入院しての手術の方が高く設定されています。
■ 倍率タイプ
受けた手術の内容(術式名)により、入院給付日額にあらかじめ決められた給付倍率をかけた金額が手術給付金となるタイプです。
たとえば、治療のために受けた手術の給付倍率が10倍と決められている場合、入院給付日額を10,000円で契約していれば10万円が受け取れるということになります。
この給付倍率は大きな手術ほど高くなり、比較的軽度な手術では低くなる傾向があります。
手術給付金のタイプは保険会社や保険商品によって異なります。給付金支払いの対象となる手術も保険商品によって違いますので、加入前にしっかりと確認することが大切です。
保険商品のパンフレットだけではわかりにくいところもあるので、保険の営業担当者に聞いて、明確にしてから加入するようにしましょう。
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民間の医療保険における「60日型」とは、入院給付金の支給日数に関連した用語です。1回の入院で給付金を受け取ることができる日数の上限が60日までの保険プランを指します。
よく60日型や120日型という表記がありますが、これは「1入院支払限度日数」と呼ばれ、1回の入院で給付金を受け取ることができる日数の上限のことを指しています。
60日型の医療保険は、例えば1日につき5,000円の入院給付金が設定されている場合、60日間入院すると最大で30万円(5,000円×60日)が支給されることになります。
おさえておきたいのは一度退院してから再入院するような、1回目と2回目の入院で期間が空くケースでの通算方法です。
<グラフ>医療保険における1入院支払限度日数【連続した入院のケース】
1回の入院だけで済んだケースです。60日型の場合は60日分が1回の入院による限度日数となるので、給付される日数は次のとおりとなります。
❶ 30日間入院したケースでは、30日分給付されます
❷ 90日間入院したケースでは、60日分まで給付され、残り30日分は給付対象外です
【入院期間が空くケース】
一度は退院したものの、再発して再入院するケースや、別の疾患で再入院するケースです。このケースでは1回目の入院と、2回目の入院の期間が180日あるかどうかがポイントになります。
❸ 同じ病気で期間が180日超空くケースでは、まず1回目の入院で30日分給付され、2回目は「別入院」と見なされます。そのため2回目の入院が60日間あっても全期間給付されます。
❹ 同じ病気で期間が180日以内のケースは、「継続した1回の入院」として判定されます。したがって、1回目と2回目の入院を合計して60日を限度として給付されます。
「1入院支払限度日数」は60日型以外では、30日・120日・180日・360日・365日・730日などがありますが、60日型と120日型の保険が最も多く取り扱われています。
では、60日型と120日型ではどちらの方が安心なのでしょうか?
■ 60日型で十分という考え方
公的健康保険制度におけるDPC制度の導入や医療技術の進展により、入院期間は年々短くなる傾向があります。一般的な治療や手術において、60日を超える入院が必要となるケースはそれほど多くありません。60日型の保険は、このような通常の医療ニーズに応える形で設計されており、短期入院に対応するための保険として選択されることが多くなっています。実際、悪性新生物(がん)による入院においても一回の入院期間は短くなっており、厚生労働省の「患者調査(令和2年)」では、平均19.6日となっています。
■ 60日型では不足するという考え方
気を付けなければいけないのは、入退院を繰り返すケースです。上述したとおり、前回の退院日の翌日から180日を経過して再入院した場合は、別入院(ケース❸)として扱われるのが一般的です。しかし、180日以内であれば、前回の入院と合わせて「継続した1回の入院」として扱われます(ケース❹)。入院給付金を受け取れるのは、前後の入院を合わせて1入院の支払限度日数までとなります。
例えば初月にがんの診断確定のために10日間入院、翌月に抗がん剤治療で15日間入院、更に翌月も抗がん剤治療で12日間入院といったように、連続して6クール*入院するような場合では、すべて1回の入院と見なされる(ケース❹)ことになります。1回の入院日数は10日前後であったとしても、180日を空けずに毎月入院が繰り返されるような場合は1入院支払限度日数に入ることを理解しておきましょう。
* 抗がん剤治療における「クール」とは、特定の治療を一定期間行い、その後に休薬期間を設けることを1サイクルとして、これを繰り返す治療の単位を指します。例えば、1回のクールが3週間の治療(治療期間+休薬期間)で構成されている場合、患者はこの3週間を1クールとして、これを何回か繰り返すことになります。このようなクールは3〜6回程度行うことが一般的です。クールの期間や回数は、患者の状態、がんの種類、治療効果などを考慮して医師が決定します。
そのため、三大疾病のような疾患をリスクと感じる場合は、60日型では不安に感じる人もいるかもしれません。この場合は、120日型のように長期間の入院をカバーするものを検討するか、もしくはがん保険などのように給付金の支払いが特定されている医療保険に加入することがおすすめです。なぜなら、がん保険の場合、一般的には1入院支払限度日数が無制限となっているからです。したがって、上に挙げたようながん入院のケースであれば安心して対策を打つことができます。
20代や30代で医療保険に加入する場合は、60日型の医療保険で十分かもしれません。その後、入院の傾向や病気のリスクに応じて、契約更新時に保障内容の見直しを行うことが重要です。
ただし、同じ保障内容(保険商品)の場合、60日型よりも120日方の方が保険料が高くなります。その点も加味したうえで検討することが大切です。
医療技術や各個人の健康状態は時間の経過とともに変化するため、ライフステージや健康状態に合わせて、1入院支払限度日数が60日型のままでよいか、あるいはより長期間のものに変更する必要があるか、更に三大疾病保険やがん保険を検討すべきかを定期的に確認するとよいでしょう。
加入する際は、保険商品のパンフレットだけではわかりにくいところもあるので、ソナミラのコンシェルジュに聞いて、明確にしてから加入するようにしましょう。 -
医療保険の通算支払限度日数とは、保険期間を通じて給付金を受け取れる日数の上限です。1,095日のものが多く、これ以外には700日・730日・1,000日などもあります。
医療保険には入院給付金や通院給付金がありますが、給付金が支払われた日数は保障が継続する限り累積されます。例えば保障期間が終身型の場合は、保障が続く一生涯に亘って給付日数がカウントされます。また、定期型で更新がある場合は、給付日数はリセットされずに続けてカウントされていきます。そして、給付金を受け取れる日数の限界が「通算支払限度日数」となります。
通算支払限度日数には1,095日の他に、700日・730日・1,000日などがあります。
過去、特約を付加する医療保障では、災害入院給付金・疾病入院給付金が700日のケースが多く、医療保険が主契約となる場合では730日とされることが多くありました。現在は、医療保険、災害入院特約、疾病入院特約など最長1,095日(3年分)までと拡大されているケースがほとんどとなっています。
3年という期間は多くの疾病や治療において、長期の入院や治療を十分にカバーできる目安と考えられています。ほとんどの病気や怪我は、1年以内に治療が完了することが多いですが、例外的に長引く場合でも3年は十分に長い期間とみなされます。
では、長期間の入院が危惧される疾病には、どのようなケースがあるのでしょうか?
<グラフ>長期間の入院が危惧されるケース【精神疾患で入院するケース】
厚生労働省の「患者調査(令和2年)」では、精神及び行動の障害における入院期間の平均は294.2日となっています。
精神疾患を含む全傷病の入院日数の平均が32.3日であることと比べると在院日数が非常に長いことが分かります。
そのため精神疾患に関して、民間の医療保険でカバーすることは一般的には難しいと考えられます。統合失調症の場合は障害年金が支給される可能性もありますので、公的保険制度と合わせて対策を考えるようにしましょう。
【がんに罹患した場合】
がんの治療では完治という考え方はなく、寛かいという言葉が使用されます。一度治療しても再発の可能性があるのです。したがって、入院の期間は空くものの、何度も入院するケースがあり得ます。その際、通算支払限度日数が1,095日を超えてしまうことも考えられなくはありません。このようなケースを不安に思われる場合はがん保険への加入がお勧めです。がん保険であれば、通算支払限度日数が一般的には無制限となっています。
【脳血管疾患に罹患した場合】
厚生労働省の「患者調査(令和2年)」では、脳血管疾患における入院期間の平均は77.4日となっています。三大疾病の他の疾患(悪性新生物(がん)、心疾患)と比較しても、1回の入院期間が長くなっています。
また、予後においても体の機能を回復させるためのリハビリ等で長期間の療養が求められることが多いため、入退院を繰り返すと3年近い治療期間となることはありえます。1,095日であれば入退院を含めて十分な給付期間だと考えられますが、不安を持たれる方は別途、三大疾病保険に加入することをお勧めします。三大疾病保険は生活習慣病の入院において、通算支払限度日数が延長されたり、無制限になる医療保険もあります。
上述のとおり、疾患によっては通算支払限度日数1,095日では足りないと思われるケースもありますが、ほとんどのケースでは長期入院においても、この1,095日を超えることはないと考えられます。
入院費用は医療保険だけで賄うのではなく、現預金や投資などバランスよく資産を保有することが大切です。
必要なときに十分な給付金が受けられるよう、事前に対策を打っておきましょう。
2-1.三大疾病への備え~三大疾病保障の検討時に知っておきたいこと~
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三大疾病とは「悪性新生物(がん)」「心疾患」「脳血管疾患」の3つの病気のことを指します。
<グラフ>三大疾病のイメージ図■悪性新生物(がん)
体のなかで発生したがん細胞が増殖して、体に害を与える病気です。がんが発生した細胞の種類によって、がんや肉腫、造血器腫瘍(血液のがん)などに分類されます。代表的ながんの例では「大腸がん」「乳がん」「胃がん」などが挙げられます。
■心疾患
心疾患は、心臓の周りに張り巡らされた冠動脈に動脈硬化などが起こることで、心筋に酸素が流れなくなり、心臓の機能が停止してしまう病気の総称です。心疾患の中でも「急性心筋梗塞」は冠動脈が急に詰まってしまい、血液を失った心筋が徐々に弱っていく病気です。
■脳血管疾患
脳血管疾患とは脳血管のトラブルによって脳細胞が障害を受ける病気の総称です。耳にする機会が多い脳卒中は、この脳血管疾患に含まれます。脳卒中には「脳梗塞」、「脳出血」「くも膜下出血」の3つがあり、いずれも脳の一部に血液が行きわたらなくなり、その部位が壊死してしまう病気です。
日本においては、これらの疾患を原因とする死亡率が高くなっています。また、三大疾病は、通常の病気と比べて入院日数が長くなったり、治療費が多くかかったりすることが特徴です。
したがって、医療保険を考える際は、これら3大疾病に罹患したときに保障が手厚くなるように対策を打つ方も多くいらっしゃいます。
自分が受けたい治療を、お金のために諦めることがない様、事前に対策を打っておきましょう。 -
八大疾病とは三大疾病である、がん(悪性新生物)、心疾患、脳血管疾患に、高血圧性疾患、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎を加えた生活習慣病のことを指します。
ところで生活習慣病とは何でしょうか。一般社団法人 日本生活習慣病予防協会では、次のように解説されています。
“病気の原因としてわかりやすいのは、細菌やウイルスなどの「病原体」や「有害物質」などです。また、なにかの病気になりやすい体質が先祖から引き継がれる、「遺伝的な要素」も、病気の発症や進行に影響します。そして、もう一つが食習慣、運動習慣、休養のとり方、嗜好(飲酒や喫煙)などの「生活習慣」も、糖尿病、高血圧、さらにはがん、脳卒中、心臓病など多くの疾病の発症や進行に深く関わっていることが明らかになっています。生活習慣病とは、これら三つの要素のうち、三番目の生活習慣にかかわる要素が強い病気をまとめて言い表した総称です。”
図で表すと次のようになります。
<グラフ>八大疾病と三大疾病の違い
■高血圧性疾患
高血圧症が原因で発症する病気のことです。高血圧症は、三大疾病である心筋梗塞や脳卒中などの重篤な疾病の原因にもなります。
■糖尿病
糖尿病は、インスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖(血糖)が増えてしまう病気です。血糖の濃度(血糖値)が何年間も高いままで放置されると、血管が傷つき、将来的に心臓病や、失明、腎不全、足の切断といった、より重い病気につながります。
■慢性腎不全
腎臓病が進行して腎臓の働きが弱くなると腎不全といわれる状態になります。腎不全には、急激に腎臓の機能が低下する急性腎不全と、数か月から数十年の長い年月をかけて腎臓の働きがゆっくりと悪くなる慢性腎不全があります。
■肝硬変
肝臓に血液中の細胞である「リンパ球」が集まる「炎症」が起こり、これが原因で肝臓の主たる働きをしている「肝細胞」が、長期間にわたって壊れ続ける病気を慢性肝炎と呼びます。慢性肝炎が持続すると、肝細胞が壊れた跡に線維が沈着し肝臓が硬くなります。これが進むと肝硬変になります。
■慢性膵炎
慢性膵炎は膵臓が作る消化酵素の影響を受けて膵臓自体に慢性的な炎症が起こることで、細胞が変性し線維化や石灰化などが生じる病気です。進行すると膵臓の消化酵素やホルモンが適切に放出できなくなります。
死亡率は三大疾病の方がより高くなりますが、三大疾病に上記5つを加えた八大疾病においても闘病期間は長くなっています。
病気も多様化している中で、八大疾病は他の病気と併発する可能性もある怖い病気です。
より幅広い保障範囲を求める方は八大疾病保障も検討に入れてみてはいかがでしょうか。 -
日本人の死亡原因の第一位は悪性新生物(がん)、第二位に心疾患が続きます。そして第三位は老衰となっています。
これまでの統計では第三位は脳血管疾患でした。しかし近年、高齢者の増加にともない、老衰が第三位に上昇してきました。
<グラフ>日本人の死亡原因
結果として、悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患が死因となる割合は約46%となりました。
1995年の統計では三大疾病が死因の59%を占めていたことを考えると、三大疾病で死亡に至る割合は減っていると言えます。
それは、医療の進化により、早い段階で有効な治療ができるようになったことも大きく貢献していると考えられます。
一方で、予後に介護が必要な状態になるケースは多くあります。。
高度障害状態や要介護状態になると本人が仕事を続けられないばかりか、周りで看護・介護をする人の経済力をも奪ってしまう可能性があります。
したがって、三大疾病保障とともに高度障害保障や介護保障といった点も合わせて見直しておくと安心でしょう
2-2.三大疾病への備え~三大疾病保障の現状~
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生命保険文化センター「2021年生命保険に関する全国実態調査」によると、三大疾病保障とがん保障の加入率は次のようになっています。
<グラフ>三大疾病保障とがん保障の加入率※ 生命保険文化センターの「特定疾病保障保険」「特定疾病保障特約」を三大疾病保障、「がん保険」および「がん特約」をがん保障として記載しています。
がん保障に関しては、がん保険に加入している人、死亡保障保険等にがん保障の特約を付加している人の割合が6割を超えています。
国立がん研究センターによると、日本人の2人に1人は一生のうちに何らかのがんになると解説されています。がんは、日本人の亡くなる原因の第一位であることから、多くの方が自分で準備をしようとしていることがうかがえます。
一方の三大疾病保障や八大疾病保障に位置づけられる特定疾病保障保険や特定疾病保障特約への加入率も5割近くになっており、多くの方の関心が高いことがわかります。
三大疾病保障もがん保障も対象の病気に罹患してからでは、保険への加入は難しくなります。後で「加入しておけばよかったな…」とならないよう見直ししておきましょう。
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がん保険で後悔したことは?加入の必要性や入っていないリスク
免責期間のない「がん保険」ってあるの?メリットやデメリットをご紹介 -
がん保障の入院給付日額の平均は、世帯主の場合11,500円となっています。
世帯主の年代別にみると、30~34歳までが最も高く12,600円となっています。
出典:生命保険文化センター「2021年生命保険部関する全国実態調査」
<グラフ>世帯主のがん保障の入院給付日額がん保険を検討する際は、次の2つの選択肢があります。
❶ がん保険単体で主契約として加入する方法
❷ 医療保険にがん特約を付加する方法
❷の場合は、医療保険の給付金に加えて、がん特約部分の給付金が上乗せされるので、合算した給付金額で入院給付日額を判断するようにしましょう。
がんの治療は、1回の入院日数が短くなってきています。厚生労働省「患者調査」(令和2年)によると、がん(悪性新生物)の治療において平均の入院日数は19.6日となっていて、脳血管疾患の77.4日、心疾患の24.6日*と比較しても短いことが分かります。
* 心疾患は高血圧性のものを除きます
一方で、がんの治療は通院や短期入院で何クールも行うケースがあります。そのため、入院限度日数が無制限となっているものもあります。
また、がんの治療においては、先進医療を利用する可能性もあることから、入院給付金以外にも様々な給付金が用意されています。
■ がん診断給付金
がんと診断されたときに給付金を受け取ることができます。1回のみ受け取れるものと、複数回受け取れるもの(1~2年に1回など)があります。
■ がん手術給付金
がんで所定の手術を受けたとき、手術の種類に応じて入院給付日額の10倍・20倍・40倍などの給付金を受け取ることができます。
■ がん放射線治療給付金
がんで所定の放射線治療を受けたとき、給付金を受け取ることができます。がん手術給付金として受け取れることもあります。
■ がん先進医療給付金
がんの治療で所定の先進医療に該当する療養を受けたとき、その技術料相当額の給付金を受け取ることができます。先進医療とは、厚生労働大臣が承認した治療法や高度な技術を用いた医療などのうち、公的医療保険の対象になっていないものを指す言葉です。療養時点で先進医療として承認されていないと給付されません。給付金の限度額は通算500万から2,000万円です。
■ がん通院給付金
がんで入院し、退院後がんの治療を目的に通院したとき、給付金を受け取ることができます。入院前の通院に対しても給付金を受け取ることができるものや、入院を伴わない所定の治療のための通院でも給付金を受け取れるものがあります。給付限度額は商品によって異なります。
■ 抗がん剤治療給付金
所定の抗がん剤治療を受けたとき。給付金を受け取ることができます。給付限度は保険商品によって異なります。公的医療保険の対象とならない抗がん剤治療(先進医療や患者申出診療など)を受けた場合でも、給付金を受け取れるものがあります。
■ がん高度障害保険金
がんで高度障害となったときに、死亡給付金と同額の給付金を受け取ることができます。
受け取った場合、契約は消滅します。
がんに罹患したときに、どのような費用が発生するのかなどは、がんに罹患された方の体験談などを聞いて判断する方法もあります。
様々な給付金が用意されていますので、保障内容をよく聞いて判断するようにしましょう。
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がんに罹患しやすい部位は、男女に違いがあります。男性は前立腺、大腸、肺の順、女性は乳房、大腸、肺の順でがんに罹患しやすいという統計が出ています。
出典:国立研究開発法人国立がん研究センター「部位別のがん罹患数(2020年)」
<グラフ>どの部位のがん罹患が多いか(男性編)<グラフ>どの部位のがん罹患が多いか(女性編)
罹患しやすい部位のがんについて、国立がん研究センターの解説を紹介します。
■ 前立腺がん
前立腺がんは、前立腺の細胞が何らかの原因で異常に増殖することにより起こる病気で、悪性腫瘍の1つです。多くの場合比較的ゆっくり進行し、早期に発見して適切な治療を行えば、治癒が望めます。
■ 大腸がん(結腸がん・直腸がん)
大腸がんは、大腸(結腸・直腸)に発生するがんで、腺腫という良性のポリープががん化して発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります。日本人ではS状結腸と直腸にがんができやすいといわれています。
■ 肺がん
肺がんは、気管支や肺胞の細胞が何らかの原因でがん化したものです。肺がんの治療法は組織型(がんの種類)によって大きく異なります。
■ 乳がん
乳がんは乳腺の組織にできるがんで、多くは乳管から発生しますが、一部は小葉から発生します。乳がんの主な症状は、乳房のしこりです。自分で乳房を触ることで気付く場合もあります。ほかには、乳房にくぼみができる、乳頭や乳輪がただれる、左右の乳房の形が非対照になる、乳頭から分泌物が出る、などがあります。
罹患しやすい部位と、がんによる死亡者数は異なっています。例えば、2020年の統計では、前立腺がんは男性で最も罹患者数が多いものの、前立腺がんで亡くなった人の数は第7位となっています。
がんは部位によっては、長期の生存を望める疾患に変わってきました。しかし、自分に合った治療を受けられるかどうかが大きなカギになってきています。
がんの罹患部位が明確になれば、治療法や治療薬はある程度の道筋が付き、保険適用の治療で進めることができます。一方で、例えば原発不明がんでは最初に発生した臓器(原発巣)がわからないため、推奨される健康保険適用の治療が見つけづらくなります。
抗がん剤は、適用部位以外で使用すると保険適用ではなくなることから、健康保険適用の治療だけでは、選択肢が制限されてしまうことになります。
そんな中、薬物治療である免疫細胞治療にも注目が集まっています。治療効果も評価できるものが出てきていますが、すべての免疫細胞治療に対して健康保険が適用されるわけではありません。進化するがん治療において、金銭面でゆとりがあるというのは、このような治療への選択肢が持てるということです。
治療の選択肢を増やすためにも、医療保険やがん保険を健康なうちから検討しておくことは意義のあることではないでしょうか。
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悪性新生物とはがん並びに肉腫のことです。細菌、ウイルスのように外から侵入してくるものではなく、その人本来の細胞が変化したもので、内から発生したものです。上皮内新生物も悪性新生物と同じく、がん細胞です。違いは、基底膜(きていまく)を超えて深く浸潤(しんじゅん)しているか、がん細胞が基底膜(きていまく)を超えずにとどまっているかどうかという点です。
悪性新生物と上皮内新生物の違い(イメージ)■ 新生物とは
私たちの体の正常な組織細胞は、必要以上に分裂しないように調整されていますが、そこから外れて自律的に増殖を始めるようになった組織が「新生物」です。新生物には、良性と悪性があり、それぞれ「良性新生物」「悪性新生物」と呼ばれます。
■ 悪性新生物とは
悪性新生物とはがん並びに肉腫のことです。細菌、ウイルスのように外から侵入してくるものではなく、その人本来の細胞が変化したもので、内から発生したものです。体内に存在する正常な細胞の遺伝子が傷つけられることによって発生し、転移の可能性が高くなります。悪性新生物は通常の細胞と比べて血管やリンパ管に流れやすく、他の臓器へ転移しやすい性質を持っています。増殖した悪性新生物が正常な細胞にも広がっていき、体力を消耗させたり、臓器の働きを妨げたりします。
■ 上皮内新生物とは
がんではあるものの、悪性新生物とは区分されます。治療によりほぼ完治し、転移の可能性が極めて低く、悪性新生物に比べるとそれほど怖くないものです。
では、がん全体に対する、上皮内新生物の罹患割合はどのくらいでしょうか?
国立がん研究センターの2019年の統計データから読み取ると
がん全体に対する上皮内新生物の罹患割合(男性):9.2%
がん全体に対する上皮内新生物の罹患割合(女性):13.3%
となっており、男性より女性の方が上皮内新生物である割合が高いことが分かります。
これは、女性特有のがんである子宮頸がんにおいては、上皮内新生物の割合の方が高くなっているためです。
がん保険やがん特約を検討する際は、上皮内新生物が給付対象かどうかも一つの判断材料になります。上皮内新生物も給付対象であれば、支払の範囲は広いと言えるでしょう。
しかし、一般的に上皮内新生物を給付範囲に含めたがん保険は、保険料も高くなります。安心感は高まりますが、そのためにより多くの保険料を支払うべきかどうかは、個人の考えによります。上皮内新生物よりも悪性新生物の方が治療に時間もお金もかかるため、その部分に保障があればよいという考え方もあります。
がん保険は保険料の安さだけではなく、給付内容も比較して検討するようにしましょう。
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脳血管疾患には、主に「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」の3つがあり、総称して脳卒中と呼ばれています。脳血管疾患のうち、この脳卒中が91.8%を占めています。
脳血管疾患の患者数の内訳脳卒中とは脳の血管が詰まったり破れたりすることで、脳の機能が阻害される病気です。脳卒中や心血管疾患(心臓と血管の病気)を合わせ、これらを循環器病と呼びます。
脳卒中は、3つの疾患の総称です。それぞれ以下のような違いがあります。
● 脳梗塞:64.3%
脳の血管が詰まり、脳細胞に血液が十分に行き渡らなくなった状態。手足や顔の半身まひや言語障害、意識障害などの症状が現れます。
● 脳出血:21.5%
高血圧などが原因で脳内の細かい血管が破れ、出血した状態。脳梗塞に比べ後遺症が残ることが多く、死亡率も高くなります。
● くも膜下出血:6.1%
脳の表面を走る血管のコブ(脳動脈瘤)が破れ、くも膜の内側の隙間に出血した状態。突然の頭痛や意識障害などの症状が出現し、脳卒中の中では死亡率が高くなります。
一般的に三大疾病保障や特定疾病保障では、脳血管疾患のうち脳卒中全般を給付対象にしているものが多くあります。
この脳卒中には、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の3つが含まれるので、脳血管疾患のほとんどをカバーできていると言えます。
厚生労働省「患者調査」(令和2年)によると、脳血管疾患の平均在院日数は77.4日となっており、他の疾患と比べても長期の入院となる可能性があります。
また、予後に障害が残るケースも多いことから多くの人が不安を持っている病気の一つです。
脳卒中について心配な人は、三大疾病保障や特定疾病保障がある保険を検討してみましょう。
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心疾患の患者数の内訳は、心不全36.6%、不整脈及び伝導障害30.6%、狭心症24.2%、急性心筋梗塞4.2%、心筋症2.3%、その他の心疾患2.0%となっています。
※ 厚生労働省 患者調査 令和2年 「全国編 閲覧第4表(その1)」
心疾患とは心臓の病気の総称であり、心臓病と呼ばれることもあります。何らかの原因で心臓の働きに異常が起こり、血液循環が上手くいかなくなることで発症します。代表的なものとしては心不全・狭心症・急性心筋梗塞などがあります。
患者数の内訳は次のグラフのとおりです。<グラフ>心疾患の患者数内訳(患者総数)
心疾患に含まれる病名の一般的な解説は以下のとおりです。
■ 心不全
心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液が送り出せなくなった状態のことをいいます。虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)、不整脈、心臓弁膜症、高血圧などさまざまな疾患が原因となり心不全に至ります。
■ 不整脈及び伝導障害
不整脈は心臓の鼓動のリズムが異常になる状態を指します。心臓は通常、規則的な電気信号に従って収縮と弛緩を繰り返し、血液を全身に送り出しますが、そのリズムが乱れると、心臓の機能が低下します。
伝導障害は、心臓の電気信号が通常のルートで適切に伝わらない状態を指します。通常、電気信号は心臓の特定の経路を通って伝達され、心房から心室へと順序よく進みますが、その経路に障害があると心拍が遅くなったり、不整になったりします。
■ 狭心症
心臓の筋肉(心筋)に十分な酸素が供給されなくなることによって、胸の痛みや圧迫感を感じる病気です。主な原因は、心臓に酸素を供給する冠動脈が狭くなり、血流が一時的に制限されることです。狭心症は冠動脈疾患の一部であり、心筋梗塞などの重大な心疾患につながるリスクがあるため、早期の診断と治療が重要です。
■ 急性心筋梗塞
心臓に血液を供給する冠動脈が突然閉塞し、心筋(心臓の筋肉)に酸素が供給されなくなることで、心筋の一部が壊死(死んでしまう)してしまう状態を指します。これは、命に関わる重大な病気で、迅速な治療が必要です。一般に「心臓発作」とも呼ばれることがあります。
■ 心筋症
心臓の筋肉(心筋)が異常をきたすことで、心臓の機能が低下する疾患群を指します。心筋症にはいくつかの異なるタイプがあり、それぞれ異なる原因や病態がありますが、共通して心臓のポンプ機能が低下し、血液を全身に十分に送り出すことができなくなります。
三大疾病保険の心疾患における給付金は、心疾患全般を給付対象とするものや急性心筋梗塞のみを対象とするものなど、様々なものがあります。
【心疾患全般を給付対象とするもの】
患者数の多い、心不全や不整脈及び伝達障害でも給付の対象となることが魅力です。仮に同じ保険料であれば、幅広く給付対象が設定されているということになります。しかし、給付対象の疾病名が増えたからといって、必ずしも給付につながるとは限りません。例えば不整脈および伝達障害の総患者数は多いのですが、患者の内訳をみると入院患者数よりも外来患者数の方が多くなっています。したがって、入院が条件になっている場合は、入院患者に限定されていることになります。
【急性心筋梗塞のみを給付対象とするもの】
急性心筋梗塞は狭心症と合わせて、虚血性心疾患と呼ばれます。急性心筋梗塞の場合は狭心症より急性期であり、外来患者よりも入院患者の方が多い疾患です。また、急性期では、心不全につながる疾患であることから、この病気だけを重点的にカバーしたいというニーズもあります。
三大疾病保険といっても、どの病名の時に支払われるのかは保険商品によって異なります。保険加入時に、ソナミラのコンシェルジュに聞いて、詳細な違いを確認するようにしましょう。 -
未承認治療薬とは、海外(FDA(アメリカ食品医薬品局)等)で承認されていながら、日本の厚生労働省では正式に認可されていない医薬品のことを指します。がん領域の医薬品において、未承認治療薬とされる治療薬は128(2023年11月30日時点)*に上っており、これらの医薬品を利用したい場合は自費となります。
* 出典:国立研究開発法人国立がん研究センター「国内で薬機法上未承認・適応外である医薬品について」<グラフ>日本で未承認または適応外である「がん領域の医薬品数」
がん治療においては、厚生労働省が認可している「標準治療」が推奨される一方で、臨床試験段階や他国で承認を受けている医薬品が未承認治療薬として使われることがあります。
未承認治療薬は米国FDA(アメリカ食品医薬品局)や欧州EMA(欧州医薬品庁)が承認している医薬品でありながら、日本の厚生労働省では認可されていない薬です。2023年11月30日時点では128もの医薬品が日本では未承認治療薬となっています。
これらの医薬品は、既存の治療法が効果を示さない場合や、標準治療が限られている患者にとって、数少ない治療の選択肢として検討されることが多くなっています。具体的には、次のようなケースで使用が検討されることがあります。
【標準治療が効果を示さないケース】
がん治療において、標準的な治療法(手術、化学療法、放射線治療など)が効果を示さない進行がんや再発がんの場合、未承認治療薬が選択肢となることがあります。
【標準治療が存在しない希少がん】
非常に稀な種類のがん(希少がん)の場合、標準的な治療法が存在しないことがあります。そのため、治験や他国で承認されている未承認治療薬を使用することが治療の選択肢になることがあります。
【患者の状態に応じた特例】
生命に危険が迫っている場合や、他の治療法がない状況で、医師の判断で未承認治療薬の使用が検討されることもあります。特に末期がん患者に対しては、延命や生活の質を向上させるために未承認治療薬が使用されることがあります。
同じ部位のがんであっても、同じ抗がん剤が効くとは限りません。10人いれば10人ともに効くわけではないのです。標準治療では効果的な医薬品が見つからない場合、他国で承認され、効果が認められている医薬品があれば、挑戦してみたいと考える人もいるでしょう。
上述した通り、国内での承認が遅れている未承認治療薬が128あるため、もしこれらの医薬品を使用したいという希望があれば自費で治療を受けることになります。
しかし、公的医療保険制度が適用されないということは高額療養費制度も適用されないということであり、高額な医薬品を自費で負担する可能性があります。
例えば、国内未承認治療薬のサシツズマブ ゴビテカン(注射薬)の場合、患者が支払うことになる医療費の概算は次のようになります。
ケースA. 自費診療の場合:233万7,032円
ケースB. 薬事承認・公的健康保険制度が適用となった場合:10万800円
※ 出典:国立研究開発法人国立がん研究センター「未承認治療薬を用いた場合の、患者さん自らが支払う医療費(モデルケース)」
公的医療保険制度が適用となった場合、ケースBのように大幅に負担が軽減されることがわかります。
このようにがんの治療において、自由診療が検討され、その費用が高額になる可能性の一つには、未承認治療薬の存在があるということです。
また、日本で医薬品として承認され公的医療保険制度が適用される医薬品でも、海外で認められている使い方(適応症)が認められていない場合があります。これを「未承認適応(適応外使用)」といい、現時点で65の医薬品が適応外薬とされています。未承認治療薬と同じように、患者にとって大きな問題となっています。
このように、がんに罹患したときは公的医療保険制度だけでは、治療費を賄いきれないケースも出てきます。治療の選択肢を増やすために、がん保険について一度は検討しておくべきではないでしょうか。
3-1.就業不能保障~就労不能保障の検討時に知っておきたいこと~
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就業不能状態とは「働けなくなる状態」のことです。もし突然の病気やけがで働けなくなったら、障害年金等が支払われるものの、これまで働いていたときのような収入を期待することはできません。
一方で、収入は減少するにもかかわらず、生活費、住宅費、子どもの教育費などの固定費を急に下げることはできません。
そのため、働けなくなると収支のバランスが大きく崩れてしまうこともあるのです。
<グラフ>就業不能時の家計のバランス
そうなると、食費や住宅費を切り詰めたり、子どもが希望していた進学先を諦めるなど、ライフプランの変更を余儀なくされるかもしれません。
このような事態に備え、就業不能保険に加入する方が増えています。生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(2021年度)」によると、生活障害・就業不能保障保険、生活障害・就業不能保障特約の加入率は2018年度の調査時に比べ増加しています。
共働き世帯が増える中で、夫婦二人の収入が前提で家計が成り立っていることも多くあります。どちらかが働けなくなったときに、もうひとりのパートナーにかかる負担はとても大きいものです。
どちらかが働けなくなったときにどのようなことが起こるのか話し合い、足りない部分は保険で準備してみてはいかがでしょうか。
各ご家庭にどのようなリスクが潜んでいるのか、自分たちだけで考えるのは難しい部分もあります。ソナミラに是非一度ご相談ください。 -
就業不能状態となったときに保障される保険には「就業不能保険」と呼ばれるものがあります。
民間の就業不能保険がどの部分をカバーするのかを確認しておきましょう。
<グラフ>就業不能保険のしくみ
病気やケガで働けない状態で給付される社会保険制度等には、次のようなものがあります。
●障害手当金
厚生年金に加入している人が障害厚生年金の障害等級(3級)よりも軽い障害状態の場合に、一時的に支給される給付金です。
●障害年金
「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があり、病気やけがで初めて医師の診療を受けたときに、国民年金に加入している場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入している場合は「障害厚生年金」が支給されます。
しかしこれだけでは、働いていたときと同じような生活水準を維持することは難しいケースもあります。
そこで民間の就業不能保険に加入することで、所定の就業不能状態が所定の期間継続したときに、給付金の支払いを受けることができます。その給付金で収入を補填することができるでしょう。
「所定の就業不能状態」や「所定の期間の継続日数」は保険商品により異なります。精神疾患によって就業不能状態になった際に給付されるものもあるので、保険を検討するにあたっては具体的なケースを確認しましょう。
厚生労働省の「雇用の分野における女性活躍推進等に係る現状及び課題(令和6年2月29日)」によると、平成25年と令和6年を比較したときに女性の労働力率は全年代で上昇しています。
例えば25~29歳の労働力率は平成25年時点で79.0%だったものが令和6年では88.2%まで上昇しています。
このように男女ともに、ほとんどの人が働く時代です。就業不能となるリスクをしっかりと確認し、不足部分は保険を活用して準備しておきましょう。 -
令和6年版厚生労働白書(資料編)から「障がい者の概数」を見てみましょう。
<グラフ>障がい者の概数
障がいを持つ人の数は1,160.2万人です。この人数には15歳未満や75歳以降の人も集計されています。つまり、就業可能な年齢ではない人も含まれています。
障がいを持つ人の内訳では、精神障がい者が全体の約53.0%を占めています。このことから、身体の障がいで働けなくなるケースよりも、精神疾患により働けなくなるケースの方が多くなっていると予想できます。
しかし、病気やケガで働けないときの収入減を補填する就業不能保険の多くは、うつ病や統合失調症などの精神疾患は保障の対象外となっています。
民間の就業不能保険で、うつ病などの精神疾患が保障対象外とされる理由には、主に次の2点が挙げられます。
・精神疾患は、見た目で疾患の有無が判別しにくい
・罹患や回復の状態が把握しにくく、保険の適用範囲を判断しづらい
精神疾患による就業不能状態に備えるには、傷病手当金などの公的保険制度が中心となることを覚えておきましょう。
一方で、身体の障がいが原因で働けなくなる場合に関しては公的保険制度に加え、民間の就業不能保険で保障を手厚くすることが可能です。
病気やケガで手や足などがが動かせなくなってしまうと、日常生活はもちろん、仕事においても制限されてしまうことが多くなります。治療のための入院と異なり、体の機能の改善や回復が見込めない状態になると、、その後の生活にも展望が見いだせないケースが出てきます。
このような不測の事態に備えて、民間の就業不能保険はこれからも需要が伸びていくものと予想されます。
就業不能保険は支払の範囲を事前に確認することが大切です。治療にかかる保障とともに、働けなくなった際の保障も検討してみてはいかがでしょうか。
3-2.就業不能保障~就業不能保障の現状~
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世帯主の約75%が就業不能に対して経済的な不安を持っています。
就業不能となると、家計のバランスが崩れ、これまで描いてきたライフプランの見直しを余儀なくされることから、事前に備えについて考える方も多いようです。
<グラフ>就業不能に対する備え生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、世帯主の就業不能に関しての現在の備えについて、約75%の人が不安を感じていることが分かります。
特に有給休暇や傷病手当金がない自営業者にとっては、安心して生活するためにも必要性の高い保障と言えるでしょう。
また、昨今、65歳~69歳までの就業率は50%を超えています。65歳を超えると障害年金は原則請求ができません。これが全体的な就業不能に対する不安感を高めている一因だと想像できます。
これから長く仕事をしていこうと考えている人は、65歳以降の就業不能もカバーできることを考えて設計する必要があります。
どのような保障を持てばよいのかは年齢によっても異なってくるので、一度専門家に相談することをお勧めします。 -
世帯主の就業不能保障の加入率は平均で15.9%となっています。
出典:生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(2021年度)」
<グラフ>就業不能保障の加入率(世帯主職業別)