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【30代からの学び直し】「年収の壁」って何? 配偶者控除・扶養控除や社会保険について徹底解説!

配偶者控除・扶養控除について考える金尾学と馬渕磨理子さん

2023年2月、岸田首相がいわゆる「年収の壁問題」について、制度の見直しに取り組むことを明言しました。夫婦ともにフルタイムで働いている場合、「年収の壁という言葉を聞いたことはあるけれど、よくわからない」「自分には関係ない!」という方もいるかもしれません。しかし多くの方がご存じの通り、配偶者の働き方だけでなく、子どものアルバイト収入などにも関わってくる問題です。さて、ここに何にも知らない男が1人、何やら家族と電話中のようです…。

目次


  1. 配偶者控除と扶養控除って何?
  2. もっと働きたいのに「壁」があるから「働き損」になるってどういうこと?
  3. 「あと30万円!」を実現するために。私たちはどう考えて働けば良いの?
  4. まとめ

金尾:買ってよママ~!どうしても新しい学生服がほしいんだよ~。え~、もう8着も持っているでしょって?そんな余裕はないって?だったらパートを増やせば良いじゃないか!え?ネンシューノカベ…?ハイグウシャコウジョ…??何それ?いつもお世話になっている馬渕さんに教えてもらいなさいって言われても、そんな都合よく毎回いるはずが…。

??:聞き捨てなりませんね!

金尾:いたぁ!!

そこに都合よく、本当に都合よく現れたのは、テレビのコメンテーターとしても大活躍中の経済アナリスト・馬渕 磨理子(まぶちまりこ)さん!

金尾:何かいつもより怒っているような…。でも、またお願いしますぅぅぅぅ!!

今回の「30代からの学び直し」では、「年収の壁」や配偶者控除・扶養控除、これからの日本人に求められる働き方について、馬渕 磨理子さんにわかりやすく解説していただきます!

馬渕磨理子さんプロフィール写真

馬渕 磨理子さん

一般社団法人 日本金融経済研究所 代表理事。コメンテーターとしてテレビ各局に出演し、ラジオ番組のレギュラーももつ人気経済アナリスト。通称「うまちゃん」。

金尾学プロフィール写真

金尾 学

30代のとにかく学びたい男。学ラン姿にグルグル眼鏡のトラディショナルスタイルが特徴。いかにも真面目そうな外見だが、その実態は…?

配偶者控除と扶養控除って何?

年収の壁にお怒りの馬渕さん 年収の壁にお怒りの馬渕さん

馬渕:金尾さん、お母さんを困らせちゃダメですよ!お母さんだって、本当はもっと働きたいかもしれないのに…。配偶者控除や扶養控除、社会保険制度にある壁は、日本人の働き方を制限する大きな問題なんです!

金尾:いきなりスイッチが入ってる!

馬渕:だって、「少子化が問題だ!」「労働力が不足している!」「生産性を上げよう!」「もっと女性に活躍を!」とか、みんなが口を揃えて言っているのに、一方で政府が働き方に制限をかけているっておかしいと思いませんか!

金尾:あ、はい…。そう思います…。

馬渕:岸田首相が年収の壁問題の解消に取り組むと発表しましたが、もっと早くから取り組まなきゃいけなかったことなんですよ!

金尾:あの…、熱弁されているところ言いにくいんですけど、そもそもハイグウシャコウジョ、フヨウコウジョって何ですか…?

馬渕:あ、そうですよね。まず「扶養控除」とは、扶養している16歳以上の子どもや両親など扶養家族がいる場合に受けられる控除です。簡単に言えば、子どもやおじいちゃん・おばあちゃんを養っていれば、そのぶんの税金を安くしますよ、ということ。配偶者を養っている場合に受けられる「配偶者控除」や「配偶者特別控除」もあります。

金尾:「不要家族」…。なんか心が痛い。

「扶養家族」を「不要家族」だと間違える金尾

馬渕:「不要」じゃなくて、「扶養」です!「扶養家族」は、経済的に養っている家族のことです。

金尾:なるほど!どっちの意味でも、僕はフヨウ家族ってことか!

馬渕:…。

金尾:そんな憐れんだ目で見るのはやめてくださいっ。

馬渕:金尾さんの場合は、お父さんが「扶養者」ですね。そして、金尾さんやお母さんが「被扶養者」になります。扶養者の税金が安くなる「扶養控除」と「配偶者控除」を受けるためには、お2人の年収が一定額を超えないようにする必要があります。それが大きな問題になっているんです!

金尾:な、なんだって!

馬渕:まず覚えておいてほしいのは、金尾さんのお母さんのようにパートタイムで働く被扶養者の「働き損」問題です!

金尾:働いているのに損をするなんて、どういうことですか?

馬渕:一定の年収額を超えてしまうと、扶養者が受けている配偶者控除が減ってしまって税金がふえるからです。被扶養者本人にも所得税納付の義務がかかり、世帯全体の手取り収入が減ってしまうという逆転現象が起こるラインがあるんです。これが「年収の壁」です。

金尾:こんなところに、見えない壁が…!

何かしらの見えない壁にぶち当たる金尾

もっと働きたいのに「壁」があるから「働き損」になるってどういうこと?

金尾:103万円の壁、106万円の壁、130万円の壁…お金がどんどんふえていく〜! 金尾:103万円の壁、106万円の壁、130万円の壁…お金がどんどんふえていく〜!

金尾:具体的に、年収の壁にはどんなものがあるんですか?

馬渕:最初に立ちはだかるのが「103万円の壁」です。

金尾:言葉だけを聞くと、「高価な壁もあるもんだな」って思ってしまいますが。

馬渕:まず年収が103万円を超えると、給与所得者は所得税を納める義務が発生します。また、扶養家族の年収が103万円を超えると扶養控除の対象外となり、扶養者の税金は上がることに。配偶者の場合には配偶者控除の対象外となり、配偶者特別控除が適応されます。

金尾:つまり僕が年に103万円を稼いでしまうと、僕も所得税を納めなきゃいけないし、パパの税金もふえてしまう…。

馬渕:そうなんです!年収103万円までなら所得税がかからず全部自分のお金になるし、お父さんの税金も上がらない。それなら、仕事を少しセーブしようと思いませんか?

金尾:思います!むしろ働きたくない!

馬渕:これが「働き損」ということです。実際に2022年、野村総合研究所がパートまたはアルバイトで働く、配偶者のいる女性を対象に行ったアンケート調査では、「年収額を一定以下に抑えるため、就業時間や日数を調整しているか」という質問に対して、6割を超える人が「調整している」と答えているんです!

出典:就業の実態や意向を把握するためのインターネットアンケート調査(株式会社野村総合研究所)

金尾:6割も壁にぶち当たってる!

馬渕:壁はそのほかにもあります。たとえば「106万円の壁」。年収が106万円以上になると、勤める会社の規模などにより社会保険に加入する義務が発生することがあります。社会保険は自身を守る制度ではあるのですが、給料から社会保険料が引かれて目先の収入が減ってしまうので、生活への影響は大きくなります。

金尾:なるほど、今度は僕たちを守ってくれるはずの社会保険が壁になる、と。

馬渕:また「130万円の壁」は、すべてのケースで社会保険に加入する必要が出てくる年収額。106万円の壁であった会社の規模などの条件がなくなり、確実に扶養者の社会保険の対象から外れることになります。さらに、多くの企業で「家族手当の支給対象外」になることも考えられる年収額です。

さらに「150万円の壁」は、配偶者特別控除が満額で受けられなくなるライン。150万円を超えると段階的に控除額が減り、201万6千円に達すると完全にゼロになってしまいます。

金尾:周りが壁だらけに…。

年収額

配偶者控除・配偶者特別控除の壁

扶養控除の壁

所得税の壁

社会保険の壁

家族手当の壁

103万円超

配偶者控除から配偶者特別控除に

扶養控除がなくなる

納税義務が発生する

 

 

 

106万円超

 

 

 

勤務先の規模など、条件によって社会保険の加入義務が発生

 

130万円超

 

 

 

社会保険の扶養から確実に外れるため、フリーランスなどの場合は国民健康保険・国民年金、会社員の場合は社会保険への加入が必須に

多くの企業で家族手当の支給対象外になる

150万円超

配偶者特別控除が満額受けられなくなる

 

 

 

 

201万6千円以上

配偶者特別控除がゼロに

 

 

 

 

馬渕:世の中では労働力不足と言われていますが、物価の上昇を受けて収入をさらにふやしたいと考える人は多くなっており、労働への意欲も高まっていると言えます。でもこの「年収の壁」があると、多くの人の労働が制限されて、労働力不足は加速してしまうかもしれません!

金尾:え?どういうことですか?

馬渕:世間ではようやく大企業の賃金が上がり始めました。2021年には「同一労働同一賃金」が適用され、これから非正規労働者の賃金も上がっていくと予想されています。

金尾:給料が上がって、良いことばかりじゃないですか!

馬渕:本当にそうでしょうか。たとえば大手流通企業のイオングループは、2023年の春からパート社員の賃金を7%アップすることを発表しました。しかし、そこで働く人が「今まで通り年収100万円くらいに抑えて働こう」と考えていると、必然的に働く時間が減ってしまうじゃないですか。

金尾:確かに…。どうしてこんな制限があるんですか?取っ払えば良いじゃないですか!

馬渕:とくに税金の話は、難しいんです。ある一定の層だけを優遇してしまうと「不平等だ」と言われてしまいます。夫を中心として妻がパートで世帯の家計を支える家庭にとっては配偶者控除の制限が緩和されることの利点は大きいわけですが、夫婦2人が相応の額を稼いで家計を支える共働き世帯にとっては「パートで働くほうが、税制で有利なんてずるい!」ともなりかねません。もちろん、逆のパターンもあり得ます。つまり、共働き世帯を優遇する税制にすると、今度は専業主夫・主婦のいる世帯からの反発があるでしょう。

金尾:何事もバランスが大切なんですね…。

馬渕:そうですね。政府もこの問題の解決にこれから頭を悩ませるのではないでしょうか。でもこの問題が解決されれば、働くのをセーブしていた人たちの労働力が活用でき、人手不足の解消も期待できます。世帯全体の所得が上がれば消費もふえ、経済が循環していく。日本の経済にとっても、良いことなんです。

「あと30万円!」を実現するために。私たちはどう考えて働けば良いの?

金尾に扶養控除の問題について解説する馬渕さん

金尾:壁だらけで身動きが取れない状況で、僕たちはどうやって働いていけば良いんですか!?

馬渕:先ほどの野村総合研究所のアンケート調査からは、「あと30万円手取りがふえれば、家計が楽になるのに」というリアルな声も聞こえてきました。しかし「年収の壁」と「働き損」のラインを越えて、仮に30万円をプラスで得るには170万円分ほど働かなければいけません。

金尾:プラス30万円のために、1.7倍の労働が必要になるんですか!

馬渕:そうなんです。手取り年収100万円から130万円にするために働く時間を3割ほど増やしたいだけなのに、年収の壁があるせいで7割も増やす必要が出てくる、とも言えます。

金尾:もういっそのこと、日本から飛び出して海外で働く方が良いんですかね!グローバル金尾に俺はなる!

馬渕:若い人が世界に出て挑戦する、グローバルに活躍するということは、もちろん素晴らしいことです。でもその理由が「日本では稼げないから」だとしたら、残念なことですよね。日本で生まれ育った人にとって、日本が暮らしやすい場所なのは間違いないんです。「一度、日本を出て海外で仕事をしてみたい」という前向きな理由なら良いですが、「稼げないから海外へ出て行ってしまう」というのは、国の経済にとって大きな損失ですし、国民一人ひとりの働く意欲も下がってしまうと思います。

金尾:そうか、金尾を失うのは、日本の大損失…。

馬渕:人材の流出を防ぐために、日本は日本人が国内で活躍できるような制度を作り、若い人がもっと魅力的に感じる国にしていかなければなりません。その一つとして、年収の壁の解決は必要不可欠なのではないでしょうか。

金尾:なるほど!でも日本で活躍するために、僕たちは何をすれば良いんですか?

馬渕:年収30万円アップを狙うための働き方の戦略としては、スキルアップなどで自分の武器を作ることが大切です。(※1)日本ではとくにデジタル人材が不足しているので、その分野の知識を学んでみるのも良いですね。

(※1)「デジタル人材の育成・確保に向けて」若宮健嗣デジタル田園都市国家構想担当大臣

金尾:え!?たとえば今まで専業主婦だった人が働くならば、スーパーのレジ打ちなどをイメージします。

馬渕:もちろん、そういうお仕事も大切です!でも、何歳からでも新しいチャレンジはできますし、ましてや今は人材不足の時代です。専門的なスキルを身につければ、30万円と言わず、壁を突き抜けて年収アップすることも可能です。

金尾:でも専門職って文系だと難しいんじゃないですか?

馬渕:文系の方なら広報のような専門職に飛び込んで行くのもおすすめです。私の知り合いには、40代後半まで専業主婦をされていて、いきなり広報・マーケティングの分野でお仕事を始めて、現在では3~4社の広報を兼任して大活躍されている人がいますよ!

金尾:ママにもすすめてみます!

馬渕:私のコメンテーター仲間がやっている会社では1,000人のリモートワーカーが登録して働いていますし、経営者と言われる方々はほぼ全員が自宅で働いています。

金尾:おお!それもすごいですね!!

馬渕:働き方の多様性が広がっていることを感じます。今後、年収の壁が取り払われれば、新しいチャレンジもしやすくなって働き方も変わるでしょう。

金尾:では、配偶者控除や扶養控除、社会保険の制度がどう変わるのが馬渕さんの理想なんですか?

馬渕:そうですね、まずは「働き損」の状況を解消すること。103万円の壁や106万円の壁を超えると発生する所得税や控除、社会保険による損失を、政府が補助してくれるような制度が必要だと思います。

金尾:それなら安心して働けますね!

馬渕:もっと言えば、配偶者控除や扶養控除については、年収の制限を撤廃しても良いと思っています。税金額は世帯年収と個人年収を見て、最終的に考えれば良いのではないかと思います。

金尾:なるほど!ちまちま考えずに、最後にバランスを調整しろ、と。豪快ですね!

馬渕:実は私も最初に入った企業(医療法人)での1年目では、収入を103万円に制限する働き方をしていたんです。大学院からの就職活動がうまく行かず、拾っていただいた職場だったのですが、「稼ぎたいのに働けない」という状況にもやもやしていました。

金尾:そうだったんですか…。

馬渕:それから実績を積んで、ようやく普通の給与をいただけるようになったという経緯があって。だからこそ、「あと手取り30万円はほしい」という切実な気持ちがよくわかるんです。

金尾:(馬渕さんが悲しそうな顔を…) この金尾学が、馬渕さんを悲しませる年収の壁を壊してみせます!

壁を壊そうとする金尾 壁を壊そうとする金尾

馬渕:それはこれから政府がやると思うので大丈夫です。物価や賃金が上がりはじめ、政府が「年収の壁」の解消にも取り組み始めている。日本は今、「働く人たちの背中を押す社会」に生まれ変わろうとしています。私たちはスキルアップや新しいワークスタイルをうまく取り入れながら、働き方を柔軟に考えていくことが大切です!

金尾:はい…!まずは自分磨きですね!とりあえず眼鏡を磨いてきます!

まとめ

今回の学びのポイントを解説する馬渕さん

皆さんも年収の壁や自分の働き方について学び直すことができたのではないでしょうか。では最後に、今回の学びのポイントを整理してみましょう!

  • 配偶者控除や扶養控除が受けられると、税金が安くなる
  • 控除を受けられる年収には制限がある。さらに一定の年収を超えると社会保険の加入義務が発生する。
  • 「103万円」「106万円」「130万円」「150万円」「201万6千円」にはそれぞれ年収の壁があり、超えると「働き損」になってしまう可能性も。
  • 手取り年収を30万円ふやすためには、戦略的なスキルアップで自分の武器を作ることが大切。

政府が制度の見直しに取り組むと言っても、すぐに変わるわけではありません。一人ひとりが自分事として考えて意見を出したり行動したりすることが必要でしょう。

経済アナリスト・馬渕磨理子さんの解説で「配偶者控除・扶養控除」の仕組みが理解できた今回の学び直し。今後の見直しを受け、今扶養に入っている人も扶養外で働くことを視野に入れてみてはいかがでしょうか。自分や家族のライフスタイル、そして幸せの在り方に寄り添った「働き方」を考えてみると良いでしょう。

  • 取材・文:庄子洋行
  • 撮影:竹下朋宏

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