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ドル建て保険はやめた方がいい?メリットとデメリットを徹底解説

目次

「ドル建て保険はリスクが高いからやめたほうがいい」「手数料が高くて損をする」といった意見を、SNSやネット上で目にして不安に感じている方も多いのではないでしょうか。しかし一方で、「保障を持ちながら外貨建てで資産形成したい」「日本(円建て)よりも予定利率が高い」という理由から、加入する人が増えているのも事実です。

結論から言うと、ドル建て保険は仕組みを理解しないまま契約することは避けるべきですが、仕組みを理解して活用すれば、有効な保障確保と資産形成の手段になり得ます。

この記事では、ドル建て保険の基本的な仕組みから、なぜ「やめたほうがいい」と言われるのか、その理由とメリットをフラットな視点で徹底解説します。ご自身にとって本当に必要な保険なのか、判断するための材料としてお役立てください。

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ドル建て保険とは?傘とドル

まずは、ドル建て保険がどのようなものなのか、基本をおさらいしましょう。

ドル建て保険の基本的な仕組み

ドル建て保険とは、文字通り「米ドル」などの「外貨で運用される保険*1」のことです。

*1 選択できる通貨は保険会社や商品によって異なりますが、「米ドル」以外にも「豪ドル」や「ユーロ」などが選択できるケースが多いです。

私たちが普段目にする円建ての保険との大きな違いは、以下の3点です。

1.    保険料の支払い

保険料をドルに換えて支払う(またはドルで直接支払う)

2.    運用

保険会社がドル建てで運用する

3.    保険金・解約返戻金の受け取り

ドルを円に換えて受け取る(またはドルで受け取る)

ドル建ての場合、日本よりも比較的金利が高い米国債などで運用されるため、円建て保険に比べて「解約返戻金がふえるスピード(予定利率)」が速いのが特徴です。また、予定利率が高いことで、同じ保険金額を確保するために必要な保険料も少なくて良いことになります。

なお、この予定利率は銀行預金などで使われる「金利」とは性質が異なります。予定利率とは、保険会社が将来の保険金や解約返戻金の支払いに備えるために、保険料の中でどれくらい運用益を見込むかを「計算上の前提」として設定される割合のことです。

これはあくまで保険会社の保険料計算に使われる「内部的な基準」であり、将来の運用成果を保証するものではありません。一方で、「金利」は銀行預金や債券などで実際に適用される利回りのことを指し、運用対象そのものの利回りを示す実際の数字です。

つまり、

    予定利率=保険料の計算に使われる“予定”の利率(保証されていない)

    金利=金融商品で実際に適用される利回り

という違いがあります。

ドル建て保険の種類と特徴

ドル建て保険には、主に以下の3つの種類があります。

    ドル建て終身保険

ドル建てで運用される終身保険です。終身保険は一生涯の保障が続き、解約返戻金も貯まるタイプが多く、死亡保障と貯蓄性を兼ね備えています。

    ドル建て個人年金保険

外貨での老後資金準備を目的としたタイプです。支払った保険料を積み立て、将来、年金として受け取ります。積立額や将来の年金原資がドル建てになります。

    ドル建て養老保険

ドル建てで運用される養老保険です。養老保険は一定期間の保障と、満期時の貯蓄機能を両方備えています。

ドル建て保険をやめたほうがいい理由指をクロスする女性

ここまで、ドル建て保険の仕組みや特徴を解説してきました。では、なぜ「ドル建て保険はやめたほうがいい」という声があるのでしょうか。その背景には、3つの大きなリスクやデメリットが存在します。

理由1.為替リスクの影響

ドル建て保険で代表的なリスクの一つです。「為替(かわせ)リスク」とは、円とドルの交換レート(為替相場)の変動によって、受け取る金額が日本円ベースで増減することを指します。

【例:1万ドルを受け取る場合】

    1ドル=150円の時(円安) ⇒ 150万円受け取れる

    1ドル=100円の時(円高) ⇒ 100万円しか受け取れない

このように、「円高」になると、ドルベースでは増えていても、日本円に戻した時に元本割れしてしまう可能性があります。この仕組みを理解していないと、いざ受け取る時に「思ったより少ない」と後悔することになります。

理由2.手数料の不透明さ

ドル建て保険には、「見えにくいコスト」があります。

    為替手数料:円をドルに換える時や、ドルを円に戻す時にかかる手数料

    保険関係費用:保険会社の運営にかかわる費用

特に、積立型の投資信託(NISAの「つみたて投資枠」など)の手数料が低くなっている現在では、ドル建て保険のコストが割高に感じられることが「やめたほうがいい」と言われる理由の一つです。

理由3.元本割れの可能性

ドル建て保険は、早期に解約すると「積立金」や「解約返戻金」から「解約控除」というペナルティが差し引かれます。契約から短期間(例えば5年以内など)で解約すると、支払った保険料よりも戻ってくるお金が大幅に少なくなり、元本割れを起こす可能性が高くなりますので注意が必要です。

ドル建て保険のメリットメリット

リスクがある一方で、ドル建て保険には円建て保険や預金にはない魅力もあります。

予定利率の高さ

外貨の金利は日本に比べて高水準であることが多いため、保険の予定利率も高く設定される傾向があります。同じ保障内容であれば、円建て保険よりも安い保険料で加入できたり、同じ保険料であればより多くの解約返戻金が期待できたりします。

資産運用としての側面

「日本円しか持っていない」という状態は、実は「日本円の価値が下がること(円安)」に対して無防備であるとも言えます。資産の一部をドルで持つことは通貨の分散につながり、円の価値が下がった際のリスクヘッジとしても機能します。

生命保険料控除の対象

NISAやiDeCoなどの投資制度・投資商品とは仕組みが異なり、ドル建て保険は「生命保険料控除*」の対象になります。支払った保険料に応じて一定の金額の所得控除が適用され、所得税・住民税の軽減効果を得ながら資産形成ができる点は大きなメリットです。一方、NISAやiDeCoは、運用益が非課税になる特典があるため、それぞれの金融商品の特性を活かして資産形成を行うことが大切です。

    生命保険料控除の適用には一定の条件があります。

ドル建て保険に向いている人腕組みをする女性

メリットとデメリットを踏まえ、どのような人がドル建て保険に向いているのかを考えてみましょう。

資産運用に興味がある人

「銀行に預けていてもお金が増えない」と悩み、多少のリスクをとってでも資産をふやしたいと考えている人には適しています。特に、長期的な視点で教育資金や老後資金を準備したい場合、有効な選択肢の一つとなります。

リスクを理解している人

「為替変動で損をする可能性もある」ということを理解し、それでも「通貨分散」や「高い予定利率」のメリットを受けたいと判断できる人です。また、余裕資金で保険での運用を行える人にも向いています。

ドル建て保険に向いていない人混乱する男性

逆に、以下のような人はドル建て保険の契約を慎重に考えるべきです。

為替リスクを理解できない人

「元本保証じゃないと嫌だ」「為替のニュースを見るたびにドキドキして不安になる」という方は、日々の為替変動がストレスの原因になりやすいため、ドル建て保険は避けたほうが無難です。

短期間での解約を考えている人

前述の通り、早期解約は元本割れのリスクが非常に高くなります。「数年後に使う予定があるお金」や「生活防衛資金(いざという時のためのお金)」をドル建て保険に回すのは控えましょう。ドル建て保険は、10年〜20年以上の長期保有が前提の商品です。

ドル建て保険のリスクを軽減する方法リスクの軽減

リスクが気になるドル建て保険ですが、運用方法を工夫することでリスクを軽減できます。

ドルコスト平均法の活用

毎月一定額の保険料を円で支払うタイプのドル建て保険*2では、「円高のときは多くのドルを購入し、円安のときは少ないドルを購入する」仕組みになります。

このような積立方法は「ドルコスト平均法」と呼ばれ、為替レートを分散させながら外貨を購入できるため、長期間継続することで平均購入単価を平準化し、為替変動の影響を比較的マイルドにできる効果が期待されます。

*2 ドル建て保険には、為替レートや商品設計の影響により、円でのお支払額が毎月一定とならない商品もあります。ドルコスト平均法の効果がどのように働くかは、商品ごとの保険料の払込方法や仕組みによって異なるため、加入前に必ず確認することが重要です。

▶【関連記事】長期投資をするときに覚えておきたい「ドルコスト平均法」とは?

長期的な視点での運用

時間を味方につけることも重要です。運用期間が長くなればなるほど、高い予定利率によって解約返戻金はふえることが期待できます。ドルベースで積み上がった解約返戻金がクッションとなり、多少の円高になっても元本割れしにくくなります。

ドル建て保険の解約について印鑑を押す男性

既に加入している方や、これから加入を検討している方に向けて、解約時に知っておきたいポイントを整理します。

解約時の注意点

解約返戻金は、契約年数によって大きく変動します。特に契約初期は返戻率が低く設定されていることが多いため、解約する前に必ず「今解約したらいくら戻ってくるか」を試算してもらいましょう。

円安・円高の影響

解約して円で受け取る場合は、そのタイミングが重要です。

    円安の時: ドルを高く売れるため、受け取る円がふえる可能性がある

    円高の時: ドルを安く売ることになるため、受け取る円が減る可能性がある

どうしても現金が必要な場合を除き、円高の時期に慌てて解約するのは避けるのが賢明です。

ドル建て保険に関するよくある質問QAのパズル

ここでは、ドル建て保険に関してよく相談される内容を整理していきます。

ドル建て保険は円安時に解約すべきか?

基本的には円安時に解約する方が、日本円での受取額は多くなります。ただし、契約から日が浅い場合は、円安の効果よりも早期解約控除の影響が上回ることもあります。円安になったらすぐ解約するのではなく、まず解約返戻金の明細を確認してください。

▶【関連記事】ドル建て終身保険、円安時に解約するべき?円高時の影響も解説します

ドル建て保険のメリットとデメリットは?

    メリット

・円建てより高い予定利率で運用できる

・保障を持ちながら外貨建てで資産形成できる

・生命保険料控除が使える(適用には一定の条件があります)

    デメリット

・為替変動により元本割れとなるリスクがある

・手数料が比較的高い

・短期解約は大きく損をする可能性がある

自分に合ったドル建て保険を選ぶドルを選ぶ男性

ドル建て保険は「絶対におすすめ」とも「絶対にやめるべき」とも言えない商品です。あなたの資産状況、リスク許容度、そして将来の目標によって、「強い味方」にもなれば「足かせ」にもなり得ます。

重要なのは、NISAやiDeCoなどの他の投資制度と比較し、アセット・ロケーションの一つとして適切かどうかを判断することです。アセット・ロケーションとは、どの資産をどこ(課税口座・NISA・iDeCoなど)に置くかを適正化する考え方です。また、保障が必要ないのであれば、そもそも保険を選ぶ意味はありません。保険には保障という機能がある一方で、運用商品として見ると手数料が相対的に高くなる傾向があります。このことを理解した上で、加入を検討しましょう。

「自分にはドル建て保険が必要なの?」「今入っている保険を見直すべき?」「NISAとどちらが適している?」そのように迷われた際は、ぜひソナミラへご相談ください。ソナミラでは、保険だけでなくNISA等も含めた幅広い選択肢の中から、お客さまにマッチしたプランをご提案します。お金の不安を解消し、安心できる未来を一緒に作りましょう。

▶【関連記事】生命保険見直しの注意点とは?適切なタイミングや損しないためのポイントを解説

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  • 監修者
    水野 崇さん

    水野総合FP事務所代表

    個別相談、執筆・記事監修、講師、取材協力などマルチに活躍する独立系ファイナンシャルプランナー。学校法人専門学校非常勤講師。 【メディア掲載】毎日新聞|朝日新聞|中日新聞|東京新聞|朝日中高生新聞|物流産業新聞社|Yahoo!ニュース|女性自身|プレジデントオンライン|日本FP協会 他多数

  • 執筆者
    川口 尚宏さん

    ヨージック・ラボラトリー合同会社 代表
    FP Support株式会社 専務取締役
    一般社団法人 膠原病PR協会ミライ 副理事

    東京理科大学卒業後、生命保険会社のシステムエンジニアとして7年間、基幹システムの開発に従事。 その後、外資系生命保険会社へ転じ、営業職として社内表彰基準およびMDRT基準を達成。 グループ会社の営業教育トレーナーとして、金融機関向け営業スキル研修やマーケット開拓研修を企画・指導する。 2021年、金融セールスパーソンを支援する「ヨージック・ラボラトリー合同会社」を設立。 営業現場でのヒアリングを通じて顧客心理を分析し、優秀なセールスパーソンの卓越したスキルを一般化・体系化。 金融・保険業界における営業人材育成の仕組みづくりに注力している。 

    【保有資格】
    • 第一種情報処理技術者試験 合格(旧制度・現応用情報技術者相当)
    • 証券外務員二種
    • ジェロントロジー検定試験 合格(高齢社会・老年学に関する学際的知識)

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