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ドル建て終身保険、円安時に解約するべき?円高時の影響も解説します

目次

ドル建ての終身保険は、円安によって保険金や解約返戻金など資産価値が上昇する可能性があることから、「保障の確保」と「資産形成」の両面で加入を検討する人がいます。

一方、ドル建て終身保険は、為替レートの変動によっては元本割れするリスクもあり、円安や円高のときにどのように対処すべきかを事前に知ってから加入する必要があります。

この記事では、過去から見て歴史的な円安水準である今、ドル建て終身保険に加入している人は、現在どのような影響を受けているのかを整理します。

これからドル建て終身保険に加入しようと考えている方は、円安や円高になったときにどのような選択肢があるのかを知る機会にしてください。

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ドル建て終身保険とは

1米ドル紙幣

ドル建て終身保険は、円建て終身保険とは異なる特徴を持った保険商品です。
ここでは、まず終身保険の基本的な仕組みを確認し、その上でドル建て終身保険の特徴を詳しく見ていきましょう。

終身保険の基本的な仕組み

終身保険とは、被保険者が生存している限り、一生涯にわたって死亡保障が継続する保険商品です。
万一の場合の保障を確保しつつ、長期的な資産形成も可能であるため、ライフプランに合わせて活用する人が多くいます。

一般的な円建ての終身保険では、契約者からの保険料は円で払い込まれ、保険会社は国債などの円建て債券で運用を行います。そして、被保険者が死亡した際には、あらかじめ定められた円建ての死亡保険金が受取人に支払われる仕組みとなっています。

ドル建て終身保険の特徴

これに対し、ドル建て終身保険は文字通り、米ドル建てで運用される終身保険です。保険料の払い込み、死亡保険金や解約返戻金の受取りが全てドル建てで行われるため、 為替レートの変動に応じて、円換算の金額がそれぞれ変化するのが特徴です。

また、ドル建て終身保険では、米国債などのドル建て資産で運用されるため、 円建て終身保険と比べると予定利率が高く設定されます。これにより、同じ保険料でも、より大きな保障額を確保でき、解約返戻金もより多く積み上げることができるメリットがあります。

ただし、為替レートの変動によっては、円換算の保険料負担が増えることや、解約返戻金が目減りするリスクもあるため、メリットとデメリットを十分に理解した上で加入を検討する必要があります。

円安と円高とは

円高と円安

ドル建て終身保険を検討する上で、円安・円高の概念を理解することは非常に重要です。ここでは、円安・円高の定義と、その原因や影響について詳しく見ていきましょう。

円安・円高の定義

円安・円高は、日本円の対外的な価値の変動を表す言葉です。
円安とは、外国通貨に対して日本円の価値が下落し、1円で買えるドルなどの外貨の量が減ることを指します。逆に、円高とは外国通貨に対して日本円の価値が上昇し、1円で買える外貨の量が増えることを意味します。

例えば、1ドル=100円の時は1万円で100ドルを買えますが、1ドル=125円になると、1万円では80ドルしか買えなくなります。この場合の為替変動を、円安になったと表現します。逆に、1ドル=100円から1ドル=80円になれば、円高になったといいます。

▶【関連記事】【30代からの学び直し】150円は「円安」で100円は「円高」ってどういうことなの?為替の不思議を徹底解説

円安・円高の原因と影響

円安・円高といった為替変動は、日本と外国の金利差、経済成長率の違い、貿易収支の変化などを背景として発生します。近年は、日本の超低金利政策の長期化や国際収支の悪化などを受けて、日本円は円安傾向が続いています。

2022年には、1ドル=150円を超える水準まで円安が進行し、日本の輸入品の価格上昇や物価高につながりました。その後も円安傾向は継続しており、2024年7月3日の東京外国為替市場では、162円目前となる1ドル=161円90銭台をつけました。このような円安進行の背景には、主に日本と米国の金利差による影響が大きく、米国の利上げによりドルが強くなり円が相対的に弱くなっているため、約37年半ぶりの円安水準を更新しています。

今後の為替レートの予測は困難ですが、ドル円であれば日本銀行や米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策、日米両国の経済動向、世界的な経済状況や地政学的リスクなどが影響を与える可能性があります。

こうした複雑な要因が絡み合う中、円安・円高の為替変動は、ドル建て終身保険にも大きな影響を及ぼします。次の章では、円安・円高のそれぞれの局面で、ドル建て終身保険がどのような影響を受けるのかを詳しく見ていきましょう。

ドル建て終身保険の為替による影響

メリットとデメリット

ドル建て終身保険は、円安・円高の為替変動によって大きな影響を受けます。ここでは、円安局面と円高局面に分けて、それぞれのメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。

円安局面のメリットとデメリット

まずデメリットとしては、円安によって円建ての保険料負担が増えることが挙げられます。例えば、1ドル=100円の時に月額100ドルの保険料だった場合、円換算の保険料は10,000円ですが、1ドル=162円まで円安が進むと、円換算の保険料は月額16,200円と、約62%も値上がりすることになります。これは家計の大きな負担となるでしょう。

一方、メリットとしては、ドル建ての死亡保険金や解約返戻金の円換算額が増加することが挙げられます。仮に、死亡保険金が10万ドルだった場合、1ドル=100円では1,000万円ですが、1ドル=162円では1,620万円と、大幅に増加します。

ただし、死亡保険金を受け取るタイミングは予測できないことであり、その時点の為替レートによって円換算の死亡保険金額は変動します。

円高局面のメリットとデメリット

円高局面では、ドル建て終身保険の円安局面でのメリット・デメリットが逆転します。
メリットとしては、円建ての保険料負担が軽減されることが挙げられます。1ドル=162円の保険料が、1ドル=100円になれば、円換算の保険料は約38%減少します。

一方、デメリットとしては、ドル建ての死亡保険金や解約返戻金の円換算額が減少してしまう点が挙げられます。1ドル=162円の時に約1,620万円だった死亡保険金が、1ドル=100円になれば1,000万円になってしまうのです。

ただし、死亡保険金は保険契約の最も重要な根幹部分であり、一般的にドル建ての死亡保険金額は保険料払込総額を大きく上回ります。ですから、一時的な円高であれば大きな問題にはならないでしょう。

また、被保険者が死亡してもすぐに資金が必要ではない場合、円換算せずドルのまま受け取ることができる保険商品も多くあります。そういった保険商品を選択することも、リスクを抑える一つの手段といえるでしょう。

このように、ドル建て終身保険は常に為替リスクとは隣り合わせであると言えます。為替変動の影響をよく理解した上で、自身の資産状況やリスク許容度に合わせて、加入を検討する必要があります。

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円安になったら解約するしかない?

解約手続きをするシニア女性

急激な円安によってドル建て終身保険の保険料負担が増加した場合、解約を検討する人もいるかもしれません。しかし、解約以外にもさまざまな対応策があることを知っておきましょう。また、解約することによって解約返戻金を受け取る場合には税金がかかることもあります。

さまざまな対応策

解約することで、為替差益を得られる可能性がある一方、大切な保障を失ってしまうデメリットもあります。そこで保険契約すべてを解約せずに、保障を継続する方法を3つご紹介します。

  1. 保険金額を減額する方法
    例えば、1ドル=100円の時に月額保険料100ドルで契約した円換算の保険料は10,000円でした。その後、円安が進み1ドル=162円となった時点では、円換算の保険料は月額16,200円に値上がりしています。このタイミングで保険金額を約62%に減額すれば、月額保険料は10,000円で済みます。保障は減りますが、支払いは継続できるでしょう。
  2. 払済保険に変更する方法
    これは、それまでの払込保険料をもとに保険金額を減額した上で、将来の保険料払い込みを停止するという制度です。保険料の負担はなくなりますが、保障は継続されるため、一時的な資金繰りに課題がある時に活用できます。
    ▶【関連記事】保険の払い済みのメリットとデメリットは?仕組みを図で解説します
  3. 延長定期保険に変更する方法
    保険料の払込みを中止して、その時点での解約返戻金をもとに、定期保険に変更する方法です。他の2つの対応策と異なり、保障額は維持されますので、「保険料の負担が下げたいが保障額は下げたくない」と言った場合に検討できる方法です。ただ、解約返戻金を掛け捨てである定期保険の保険料に充当していくことになるので、解約返戻金は減っていくことになります。

いずれの方法にもメリット・デメリットがあるため、自身の家計状況やライフプランに合わせて、慎重に検討することが大切です。通貨の分散や、保険料の平準化なども視野に入れつつ、長期的な視点を持つことが重要でしょう。

これからドル建ての終身保険に加入するのは損?得?

クエスチョン

現在、新たにドル建て終身保険に加入することを検討している方もいるかもしれません。ここでは、為替の将来予測の難しさと、長期的視点の重要性について考えていきましょう。

為替の将来予測は困難

現在のドル円相場は、1ドル=160円前後という約37年半ぶりの円安局面にあることを受けて、このタイミングで新たにドル建て終身保険に加入するのは得策なのでしょうか。

結論から言えば、それは誰にもわかりません。

なぜなら、  将来の為替の動きを正確に予測することは非常に困難だからです。足元の円安が今後も続く保証はありませんし、むしろ歴史を振り返れば、行き過ぎた円安の後には円高局面が訪れることも少なくありません。
仮に今後、急激な円高に進んだ場合、保険料は円ベースで下がる一方、死亡保険金や解約返戻金の円換算額は目減りすることになります。為替の方向性を見誤れば、大きな機会損失を被る可能性もあるのです。

長期的視点とリスク許容度

したがって、ドル建て終身保険への加入は、短期的な為替変動ではなく、より長期的な視点に立って検討すべきものと言えるでしょう。具体的には、以下のようなポイントを考慮する必要があります。

  • 自身の将来設計やライフプランにおいて、外貨建ての資産をどの程度組み入れるべきか
  • 保険料負担が増えた場合、どの程度なら許容できるか
  • 為替差損が発生した場合、どの程度なら許容できるか

これらの点は、個人によって大きく異なります。為替リスクを引き受けても、より高い保障を得たいという方もいれば、為替の変動は避けたいという方もいるでしょう。
大切なのは、ドル建て終身保険のメリット・デメリット、そしてリスクの特性をよく理解した上で、自身のリスク許容度に照らして加入を検討することです。その上で、通貨の分散や、保険料払込方法の工夫なども考えていくと良いでしょう。

ドル建て終身保険にもいろいろある

岐路

ドル建て終身保険には、さまざまな商品バリエーションがあります。ここでは、それらの特徴を理解し、自身に合った商品選びをする重要性について考えていきましょう。

さまざまな商品バリエーション

ドル建て終身保険には、一時払いタイプの商品もあれば、月払い・年払いなどの分割払いタイプの商品もあります。為替リスクを考慮すべきタイミングは商品によっても異なり、一時払いタイプの場合は契約時に集中しますが、分割払いタイプであれば平準化されます。

また、予定利率の設定方法や為替手数料も、保険商品によって異なります。中には、為替リスクをヘッジする仕組みの商品もあり、この場合は為替リスクが低減するものの、為替ヘッジなし商品よりも予定利率が下がるなど、メリットが小さくなるケースがほとんどです。したがって、メリットやデメリットの大きさは一様ではありません。

自身に合った商品選びが重要

ドル建て終身保険への加入を検討する際は、自身のニーズや資産状況に合った商品選びが重要だと言えます。単に「ドル建て」というだけでなく、商品の特性を理解し、自分のニーズに合っているかをよく吟味することが求められるのです。

特に、保険料の払込方法は慎重に選ぶ必要があります。

ドル建て終身保険は、うまく活用すれば、「保障の確保」と「資産形成」を両立することができる魅力的な商品です。しかし、それはあくまで、自身のリスク許容度や資産状況に合致した場合に限られます。為替変動というリスクを十分に理解し、長期的な視点を持ちつつ、慎重に検討していくことが必要になるでしょう。

専門家に相談することの重要性

ドル建て終身保険は、生命保険と為替リスクが交錯する複雑な商品であり、加入の是非を判断するのは容易ではありません。将来の為替変動を正確に予測することは不可能であり、保険商品の細かな違いを理解するのも一般の方にとっては難しい面があります。

したがって、ドル建て終身保険の加入を真剣に検討する際は、専門家に相談することが大切です。保険会社の担当者はもちろん、ファイナンシャルプランナーや税理士など、保険と資産運用の両面に詳しい専門家のアドバイスを仰ぐことをおすすめします。

専門家は、ドル建て終身保険のメリット・デメリットを中立的な立場から説明してくれるでしょう。また、個人の資産状況やリスク許容度を踏まえて、最適な商品選びをサポートしてくれます。為替ヘッジの方法や、税務上の留意点なども、専門家の助言があれば理解しやすくなるはずです。

ただし大切なのは、専門家のアドバイスを全て受け入れるのではなく、あくまで自身で決断することです。アドバイスを参考にしつつも、最終的には自分の人生観やライフプランに照らし合わせて、加入の是非を判断する必要があります。

ドル建て終身保険は、長期にわたる契約であり、一度加入すると簡単に解約すべきものではありません。保障機能を重視し、資産形成においては短期的な為替変動に一喜一憂するのではなく、長期的な視点を持って、検討していきましょう。

まずはソナミラでオンライン相談

オンラインで相談をする女性

今回は、ドル建て終身保険の基本的な仕組みや、円安・円高局面での影響、加入の是非などについて詳しく解説してきました。

ドル建て終身保険は、「保障の確保」と「資産形成」を両立することができる魅力的な商品である一方、為替リスクを内包している点に注意が必要です。特に昨今のような急激な円安局面では、保険料負担が大きく増加する可能性があります。

しかし、為替の大きな変動に直面しても、解約せず減額や払済保険への変更など、さまざまな対応策があります。大切なのは、長期的な視点を持ち、為替リスクを適切にコントロールしながら、保障を継続させていくことです。

これからドル建て終身保険に加入する方にとっても、為替の将来予測は困難であることを認識しておく必要があります。短期的な損得ではなく、自身の資産状況やリスク許容度に照らして、慎重に検討することが求められます。

その際、保険の専門家に相談し、アドバイスを仰ぐことも大切でしょう。ソナミラでは、コンシェルジュが保険の相談を承っています。オンラインでも対面でも相談でき、相談だけなら何度でも無料です。
ドル建て終身保険が自分に合っているのか悩んだ際は、ぜひ一度ソナミラのコンシェルジュに相談してみてください。

※記事の内容は2025年4月末現在の税制に基づき記載しております。

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  • 監修者
    水野 崇さん

    水野総合FP事務所代表。個別相談、執筆・記事監修、講師、取材協力などマルチに活躍する独立系ファイナンシャルプランナー。学校法人専門学校非常勤講師。 【メディア掲載】毎日新聞|朝日新聞|中日新聞|東京新聞|朝日中高生新聞|物流産業新聞社|Yahoo!ニュース|女性自身|プレジデントオンライン|日本FP協会 他多数

  • ソナミラ編集部さん

    「健康で豊かなミライにソナえる」をコンセプトに、マネー・ライフデザインをテーマとしたコンテンツを発信しています。 あなたの可能性を広げるため、読んでためになったと思える記事の制作を心掛けています。

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ソナミラ株式会社 金融商品仲介業者  関東財務局長(金仲)第 1010号