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注目高まる「リスキリング」とは DX時代に学び直す意義と課題

リスキリング

最近、「リスキリング」という言葉をよく耳にするようになりました。「社会人の学び直し」とも言われていますが、なぜ注目されているのでしょうか。意義や背景、課題を解説します。

目次


  1. 国は「5年間で1兆円」投資へ
  2. 広告、情報サービス、金融業界で進む取り組み
  3. スキルを身につけ転職する可能性も

リスキリングは「リ・スキリング」、英語のスペルは「Reskilling」です。経済産業省の資料では、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と説明されています。

特に最近では、社会や企業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)が進む中で、DXに対応したスキルを身につけること、と解釈されることが多いようです。デジタル化にともなって新しい職業が生まれ、仕事の進め方も大きく変わりつつあります。ビジネスモデルや事業戦略が変わる中で、企業が「DX時代の人材戦略」として、多くの従業員のデジタルスキルを再開発しようとしているのです。

国は「5年間で1兆円」投資へ

いつごろからリスキリングが注目されるようになったのでしょうか。Googleでの検索ボリュームが増え始めたのは2021年初めごろでした。この年の後半には、日本経済新聞の記事にも「リスキリング」のワードが多く登場するようになっています。

2022年10月には、岸田文雄首相が「個人のリスキリングに対する公的支援については、人への投資策を、『5年間で1兆円』のパッケージに拡充します」と表明しています。

広告、情報サービス、金融業界で進む取り組み

こうした背景もあり、企業はリスキリングへの取り組みを急いでいます。

Amazonは2025年までに米アマゾンの従業員10万人をリスキリングすると発表し、1人当たり約75万円を投資する方針です。国内でも、日立製作所が2020年4月から、国内グループ全16万人を対象に、DXへの対応策として専門研修を始めました。富士通も2020年度の経営方針で、DX企業への変革のために5年間で5,000億~6,000億円を投じることを表明し、その中でリスキリングを重要課題に据えました。

帝国データバンクが2022年11月に公表したリスキリングに関する企業意識調査によると、「リスキリングに取り組んでいる」と答えたのは、大企業だと60.4%に上りました。取り組み内容は「新しいデジタルツールの学習」「eラーニング、オンライン学習サービスの活用」が上位でした。一方で、中小企業でリスキリングに取り組んでいたのは45.8%にとどまり、「10年後、20年後を見据えた人材育成は難しい」との声が寄せられています。業種別では、リスキリングに取り組む割合の上位3業種は、「広告関連」69.2%、「情報サービス」67.5%、「金融」62.1%でした。

スキルを身につけ転職する可能性も

実際にリスキリングに取り組む企業では、どんな課題を抱えているのでしょうか。

3年ほど前から社員のリスキリングに取り組む国内の大手企業では、社外講師を中心にした研修でデジタルスキルを身につけた社員を、元の所属部門とは別の部門に配属しています。人事担当者は、リスキリングに取り組む理由について「時代の変化に会社が淘汰されないようにするため、今までとは違う価値を生み出さなければいけない危機感がある」と話します。「DXに対応できる即戦力を外部から採用しようにも、そうした人材は引く手あまた。それなら今いる人材を育成するしかない」という事情もあるそうです。

また企業がコストを掛けて社員にリスキリングをしたとして、育った人材が転職してしまうリスクもあります。この人事担当者は「転職されてしまうのは仕方ない。リスキリングで得た知識を社内で生かしてもらえるように社員をちゃんと処遇し、自分にプラスだと思える環境を用意することが大事だ。良いパフォーマンスを出してもらわないとコストを掛ける意味がない。社員のモチベーションにつながるメッセージを、企業側がどれだけ打ち出せるか。それがリスキリング成功のカギ」と話しています。

働く人にとって、リスキリングはこれまで歩んできたキャリアパスを大きく変えることにもつながります。「DX時代の人材戦略」としてリスキリングに注目が集まる中、自分にとって学び直しが必要かどうかを検討し、ご自身の今後のキャリアプランを考えてみてはいかがでしょうか。

▼参考資料

  • 経済産業省「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」
  • 首相官邸「第二百十回国会における岸田内閣総理大臣所信表明演説」
  • 帝国データバンク「リスキリングに関する企業の意識調査」