新築住宅の太陽光パネル、東京都が設置義務化へ 国内外で広がる動き
東京都は2022年12月、新築の建物に太陽光パネルの設置を義務づけることを決めました。ビルやマンションのほか、全国で初めて戸建て住宅も対象にし、2025年4月から始める予定です。家庭の温室効果ガスの排出を抑えるのが狙いで、燃料費の高騰が続く中、一般家庭にとっては光熱費を抑える効果もありそうです。ただ、設置費用が住宅価格に上乗せされるといった課題もあります。制度の概要や今後の見通しを解説します。
大手ハウスメーカーが対象、年間2万棟に設置見通し
東京都の新制度では、戸建て住宅の場合に太陽光パネルの設置が義務づけられるのは、家を買う人ではなく、ハウスメーカーなどの住宅供給事業者です。都内で年間2万平方メートル以上の建物(住宅・ビル)を建築する大手メーカーが対象となり、東京都は50社ほどになると見込んでいます。都内で年間に建てられる新築棟数の半数程度の規模になりそうで、対象の戸建て住宅は年間約2万棟に上る見通しです。既存の建物は対象外です。
義務化の対象となったメーカーには、各社ごとに発電容量のノルマが課されます。屋根の小さい家や日当たりが悪い家は太陽光発電に不向きのため、どの建物にパネルを設置するかは、メーカーが決めます。注文住宅を建てたり建売住宅を買ったりする人は、パネルを設置するかどうかをメーカーと話し合うことになります。
初期費用98万円は「10年で回収可能」
パネルの設置などにかかる初期費用は住宅価格に上乗せされることになりそうですが、パネルがあれば月々の電気代を節約できます。東京都は「4kWの太陽光パネルを設置した場合、初期費用約98万円が10年程度で回収可能」と説明しています。さらに、30年間の支出と収入を比べると、最大159万円のメリットを得られる計算だとしています。
とはいえ、約100万円の初期費用はかなりの負担になります。そこで東京都は、初期費用をかけずに済むリース事業者への補助も検討しています。
狙いはCO2削減、脱炭素化
東京都が太陽光パネルの設置義務化を決めたのは、二酸化炭素(CO2)の排出を抑える「脱炭素化」が狙いです。
都内のCO2排出量の約7割が建物でのエネルギー使用によるもので、そのうち半分近くが家庭から排出されています。これから2050年までに約130万棟の住宅が新築されると見込まれ、2050年時点で住宅の7割がこれらの新築住宅に置き換わる見通しであるため、そこに太陽光パネルを設置すればCO2の排出を大きく減らすことができるのです。新制度で太陽光による発電容量は年間4万kWずつ増えると予想されており、これは都内の太陽光による発電容量(2020年時点)の約6%に相当します。
家庭用の4kWの太陽光パネルで1年間発電した場合のCO2削減量は、スギ林約2,000平方メートル分(約200本分)の吸収量に相当します。東京都は「設備を導入することで脱炭素社会の実現に大きく貢献できる」とメリットを強調しています。また太陽光パネルがあれば、災害時に停電しても、自家発電で電源を確保できるメリットもあります。
東京都の小池百合子知事は、制度導入による経済効果を2,000億円と見込み、「都民・事業者と一体となって太陽光発電ムーブメントを加速していく」と話しています。
太陽光パネル設置義務化 国内外で進む
新築の戸建て住宅への太陽光パネル設置義務化は、国内では川崎市も2025年4月からの導入を目指しています。京都府・京都市は延床面積300平方メートル以上の新築・増築時に設置を義務化しており、群馬県も延床面積2,000平方メートル以上の新築・増改築時に設置を義務化する予定です。
海外でも同様の動きが進んでいます。米国ではカリフォルニア州が2020年に、州内全ての新築住宅に太陽光発電施設の設置を義務づけました。ニューヨーク市も2019年に、新築及び大規模な屋根修繕をする建築物に対し、太陽光発電か緑化を義務化しました。欧州連合(EU)も2029年までにすべての新築住宅に太陽光パネルの設置を義務づけます。
太陽光パネルを戸建て住宅に設置することにより、一人ひとりが脱炭素社会の実現に家庭で貢献できることになります。一方で設置費用がかさみ、家を買う人には負担が増すことにもなりそうです。東京都以外の自治体にも同様の動きが広がりつつあるため、これから家を買おうとする人、建て替えの可能性がある人には、少なからず影響が出てくるかもしれません。東京都の導入は2025年の予定ですが、ほかの地域の方も含めて、早めの情報収集で太陽光パネル導入に向けた備えを進めてはいかがでしょうか。
参考:東京都環境局「太陽光発電設置 『解体新書』・Q&A」
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