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投資に一歩踏み出せないのには理由がある!経済アナリスト・森永康平さんに聞く資産形成のステップ

「老後が不安で、資産をふやしたい」「投資に挑戦したい。でも、どうしたらいいのかわからない」という人は少なくないと思います。投資にはリスクがつきものですし、もちろんある程度の知識も必要です。では、投資を始めるためには、まず何を学んでいけばいいのでしょうか。

後編では、森永康平さんに投資をするために必要な知識や、資産運用する際に気をつけるべきことについて話を伺います。

目次


  1. 自分を守るためにも、大人が知っておくべき金融教育の基本
  2. お金の不安があるなら、まずは家計を知ることから始めよう
  3. 本格的に資産運用をスタートするなら、しっかりとステップを踏んで進めるべき
  4. 資産運用はあくまで余剰資金で。知識をもとに正しい投資をしよう

▼「経験が最高の教材」。森永康平さんがお金のリテラシーを身につけた方法は?気になる方は前編へ!

自分を守るためにも、大人が知っておくべき金融教育の基本

――2022年には「高校で金融教育が始まる」と大きな話題になりましたが、この取り組みに対してはどうお考えですか?

森永:まず「2022年から高校での金融教育が始まった」という報道には、少し間違いがあります。実は、それ以前からも金融教育は家庭科などで行われてきました。東京都内の家庭科の先生にも実際に話を聞いたのですが、そのみなさんも同じことを言っています。「前からやっていたんだけどね」と。

では2022年に何が変わったのかというと、新しい学習指導要領に「投資信託」という言葉が盛り込まれたんです。正しく言うと、文部科学省の「高等学校学習指導要領解説」に、家庭科のなかで「預貯金、民間保険、株式、債券、投資信託等の基本的な金融商品の特徴(メリット、デメリット)、資産形成の視点にも触れるようにする」と明記されました。

投資について学ぶことだけが金融教育ではないのですが、日本では金融教育が「投資教育」のことだと思われている表れだと感じています。

あくまでも投資教育は金融教育の一部であると話す森永さん

――「投資教育」はあくまで金融教育の一部なんですね。では、どういった形が金融教育の理想なのでしょうか?

森永:高校での教育も幅広く学べるようにはなっているのですが、やはり、お金とは何だろうという話とか、税金や社会保障についての話、そもそも株式とは何なのか、お金の流れやお金にまつわる社会の構造について、すべてしっかりと時間をかけて学ばなければいけないと私は思っています。

高校を卒業する年齢の18歳からは成人になり、選挙権のある大人の一員です。税金や社会保障がどう自分の生活に影響するのかを知って、初めて責任をもった投票ができるようになるはずです。

――大人のなかには、学校で金融教育を受けていない方もいます。大人こそ知っておかなければならない、基本の知識はありますか?

森永:基本的なところでいえば、ノーリスクな投資はないということ。当たり前なのですが、ローリスク・ハイリターンも絶対にありません。投資を考えるうえで、自己防衛のためにも知っておくべきことです。

お金の不安があるなら、まずは家計を知ることから始めよう

――では、家計を把握するうえで、学んでおかなければならない知識はなんでしょうか?

森永:なぜ家計に関する知識が必要なのかを考えたほうがよいですね。私が講演を行った際に、「お金について不安があるんです」と個別に相談をいただくことがあります。でも、漠然とした将来への不安を払拭するには、きちんと家計を把握するしかないんです。

お金に不安がある方が多いという森永さん

――将来のお金に不安がある方は多いと思います。そういう方にはどのようなアドバイスをされるのですか?

森永:ざっと家計を試算してみるのが一番だと伝えています。手取りの収入は額面からどれだけ天引きされて、いくらなのか。まずここをちゃんと言える人が少ないんです。次に、固定費は家賃や光熱費・通信費などでいくらかかっているのか。

さらに変動費を差し引いて残った金額を、仮にすべて貯金に回せたとして、1年にいくらためられるのか。そして65歳まで働くとして、いくらたまるのか。そう計算していくと、どれくらい資産を形成できるのか、シミュレーションすることができます。ここまで整理できると、たとえ老後破産するかもしれないという結果が出ても、みんな少し不安が軽減されるんですよ。

――悪い結果が出ても、不安が減るんですか?

森永:私もなぜだろうと考えたのですが、おそらくお金に悩む方は目隠しをして車を運転しているような感覚だったのだと思います。私と話して試算してみたら、はっきりと視界がひらけたのでしょう。

先の道が見えれば、あとはしっかりとハンドリングさえすれば安全に進むことができるので、ポジティブに考えられるようになります。家計についての知識は、自分の将来へ続く道の視界を晴らすことができるツールなんです。

本格的に資産運用をスタートするなら、しっかりとステップを踏んで進めるべき

資産運用をスタートするなら、しっかりとステップを踏んで進めるべきだという森永さん

――投資を考える人は、まず何を学ぶべきなのでしょうか?

森永:投資をするにも、まずは家計の把握が重要です。先ほどの「お金に不安を感じている」という方に、「家計を把握しましょう」と伝えると「もっと具体的な資産運用のやり方を教えてくれるかと思いました」と言われることがあります。しかし、本格的な投資をする余裕があるかどうかを判断するには、まず自分の家計を知る必要があります。

実は「どうしても投資に踏み出せない」という人は、投資しても問題ないお金がどれくらいあるかを理解していないことが大半なんです。

――まずは家計を知ることが第1のステップなんですね。次のステップはどう踏み出せばいいのでしょうか?

森永:資産運用に使えるお金の確認ができたら、次は少額からでも投資信託あたりから始めてみることをおすすめします。私も大学時代に株式取引を経験して、「しっかり勉強しなければ」という意識が芽生えていきました。

5,000円だけでも投資を始めてみると、その5,000円を失うのが怖くなるんです。たとえば、私は格闘技が好きなんですが、見ているだけでなく、自分で総合格闘技を始めてみると、試合の見方も全然変わってくるんです。それと同じで、投資は実際に始めてみたほうがどういうものか実感できます。そうして実践のなかから投資のいろはを学んで、本格的な資産運用へと進んでいくのがいいと思います。

――ご自身の経験から、資産運用をする際に気をつけた方がいい点はありますか?

森永:投資はうまくいっているときほど、勘違いしてしまいがちです。自分もそうでしたが、自分のなかで根拠がある投資はうまくいくことが多いんです。しかし、そうなると「自分はすごい」と勘違いして、取引していないことが機会損失に感じてしまいます。根拠がないのに無理に理由を探して投資をしたときは、大体失敗してしまうパターンが多いですね。

資産運用はあくまで余剰資金で。知識をもとに正しい投資をしよう

――実際に、森永さんはどのように資産形成をしているのでしょうか?

森永:私の場合は、基本的に預金をしっかりとキープする派なんです。今は半分以上の資産は預金して、残りを応援の意味も込めて上場していないベンチャー企業へ投資しています。昔の自分なら、「機会損失だ」と感じて、もっと株式投資に回してしまっていたかもしれませんね。そこは私も失敗を繰り返して、成長した部分だと思います。

とはいえ、時期によって大きく割合は変動するので、株式に大きく投資することもあります。その場合はやはりリスクがあるので、私の真似はおすすめしないですけどね(笑)。

自分の真似をするのはよくないと話す森永さん

――預金を重視されているのには理由があるのですか?私たちはどれくらいお金をためてから、投資に挑戦するのがいいのでしょうか。

森永:私にとってお金は自分の選択肢を広げるツールという考え方が、預金を重視する理由にもなっています。たとえば、何らかの理由で仕事ができなくなってしまったときに、半年から1年くらい生きていけるお金があれば、その間に仕事を探すこともできます。そうやって行動の選択肢を増やしたうえで、余剰資金があるなら投資に回すくらいの考え方がベターではないでしょうか。

――今から投資を始める人に、アドバイスやメッセージをお願いします。

森永:2024年からは「新しいNISA」が始まります。従来であれば利益に対して、約2割の税金がとられるのが金融取引ですが、NISAであれば非課税になる。しかも新しいNISAでは非課税保有期間も無期限に。この税金優遇制度を利用しない手はないと思いますよ。

こうした税金の知識の有無は、NISAのメリットを強く感じるかどうかに大きく影響するんです。これも投資をしようと考えるマインドにつながるので、金融教育の大切さをあらためて感じますね。

そして、お金はあくまで人生の脇役であり、ツールでしかありません。何かやりたいことがあって、そのためにお金が必要になることはあります。しかし、絶対にお金を集めることが人生のメインになってはならないと私は思っています。みなさんは、お金とはぜひフラットに接してあげてください。

  • 取材・文:庄子洋行
  • 撮影:竹下朋宏

*金融商品等にご投資いただく際には、各商品に所定の手数料等をご負担いただく場合があります。また、各商品には価格の変動等による損失が生じるおそれがあります。投資に関する決定はご自身のご判断と責任において行っていただきますようお願いいたします。