タイパ重視のデメリット!意外な落とし穴とは?
最近の若者たちの特徴を表すワードとして「タイパ(タイムパフォーマンス)」が話題になっています。
タイパは、生活の中で効率よく時間を過ごして、高い満足感を得られる状態のことを指します。無駄な時間をかけずに楽しめたときや、有意義な時間を過ごしたときに「タイパが良い」と表現します。
タイパを重視する人は、限られた時間をどう使えば満足度の高い結果を得られるのか常に考えて行動しています。この考え方は、就活中の学生たちの中でも広がっているようです。
一方、タイパ重視の考え方には大きな落とし穴があります。特に、ビジネスや就活ではタイパを重視し過ぎるあまり、良い結果が出ないこともあるため、注意が必要です。
この記事では、タイパを重視することのデメリットについて解説します。「仕事や勉強を効率よくこなしたい」「タイパが良い暮らしをしたい」と考えている人は、タイパ重視による弊害についても把握しておきましょう。
タイパのメリットとは?
私たちには、1日24時間が平等に与えられています。タイパを意識することで可処分時間を増やし、「自分の意志で自由に使える時間」をより多く持てることが最大のメリットです。
タイパを重視した行動には、家に帰ってからすぐに完成する時短レシピを活用したり、お掃除ロボットを活用して家事にかかる時間を短くするなどの方法があります。こうしたやり方で生まれた時間をプライベートの時間にあてることで、タイパが良い充実した生活ができていると感じられるでしょう。
ちなみに、タイパとよく似たワードである「コスパ(コストパフォーマンス)」は、少ないお金で高い満足感を得ることを意味しています。コスパに対して、タイパは少ない時間で高い満足感を得ることを指しているのです。
最近では、レシートをスマホで撮影することで支出を記録できる家計簿アプリも登場しました。コスパだけでなく、タイパを意識して行動することで無駄な支出が減って家計管理に役立つ場合もありますね。
タイパの意外な3つの落とし穴
タイパを重視して時間に余裕が生まれるのは良いことですが、その反面不利益を被る場合があります。
特に、ビジネスパーソンや就活生にとっては、物事に時間をかけて取り組んだ方が結果が良くなることもあります。行き過ぎたタイパ重視の仕事や勉強、就活には十分気を付けましょう。
ここからは、タイパを重視する人が陥りやすいデメリットについてご紹介します。
ワークライフバランスの問題点
タイパを求める人の動機のひとつに、「ワークライフバランスを良くしたい」という想いが挙げられます。
近年では、働き方改革によって残業することが難しい状況となっています。そのため、タイパを重視する人は、できるだけ少ない時間で仕事を完結させることを目指していると思います。
しかし、目先の作業をこなすことだけが「仕事」とは限りません。人と人とのコミュニケーションを円滑にすることも重要な仕事です。
例えば、会社で新しい企画のプレゼンをするときは、関係部門への根回しが求められます。そのときに、この仕事のキーパーソンが誰なのか、自分の足で現場に行って自分の耳でヒアリングしなければ分からないことも多いのです。
また、会社内での人間関係が十分に築けていないまま、タイパ重視で直接メールで関係者に相談しても答えが返ってこないケースも少なくありません。
仕事の種類によっては、ネットやAIツールを駆使することで時間が短縮でき、良い結果が得られるかもしれません。しかし、すぐに答えが出せるような方法を選んで短時間で成果を積み上げても、仕事のスキルが上がらない可能性があるのです。
人と人とのコミュニケーションはすべてが合理的ではありません。回り道することでしか手に入らない結果があることを理解しておきましょう。
就活時の機会損失
一方、就活時でもタイパを重視しすぎるあまり、弊害が生まれることがあります。タイパを意識して就活に挑む人が増えている中、採用する企業側はどう考えているのでしょうか?
「2024年卒マイナビ企業新卒採用予定調査」によると、「就活生の就職活動においてタイパを意識すること」について、全体の7割に上る人が「良い部分も良くない部分もある」と考えていることが分かりました。
企業側は、多くの企業を見てほしいという想いがありながら、タイパを意識する学生の考え方にも理解を示しています。時間に追われる就活生たちの行動傾向をとらえたうえで、採用セミナーなどの採用企画を打たないと評価されないと考えているようです。
一方で、タイパを意識することに対する「良くないこと」として、次の3つが挙げられています。
①情報の取りこぼしがおきる恐れがある
タイパを重視して企業研究を進めていると、得られる情報が表層的になる恐れがあります。
「企業理念が掲げられたものだけでなく、本当に浸透しているのか?それは、自分の価値観と一致しているのか?」といった部分を見るためには、企業のスペックではなく、中身を見なければわかりません。その分析には時間がかかるものです。
表層的な分析では、入社動機が希薄になるため、自己PRや面接が上手くいかないことがあります。また、就職できても、仕事にやりがいを感じないといった弊害が生まれてしまう可能性があります。
情報収集をじっくり行うことは、希望する企業から内定を得られやすいだけでなく、自分にとって本当に働きやすい企業をしっかり選ぶためにも重要なポイントです。
せっかく入社したのに、思っていた企業じゃなかったと感じてすぐに辞めてしまうよりは、しっかり時間をかけて企業研究をした方が将来的にはメリットが大きくなります。
②ミスマッチが起きやすい
学生、企業ともに採用までに時間をかけた方が、ミスマッチを防ぐことができるといわれています。
オンラインの説明会だけでなく、実際にその企業を訪問して説明会に参加することで、その会社や社員の雰囲気がよく分かります。
「最初は好感を持てなかったが、働いている人の姿を見て似ているものを感じた」というのは、直感かもしれませんが、案外正しい判断なのかもしれません。
時間をかけて就活をし、本当に自分に合った企業を選んでいきましょう。
③仕事に対する姿勢について不安がある
企業側は、就活生のタイパ重視の姿勢を見て、「仕事を覚えることができないのでは?」と疑問を持つケースも多いようです。
企業にはそれぞれの風土があり、企業なりの文化があります。ひょっとすると無駄な作業があるかもしれません。しかし、改善すべき無駄な作業かどうかは、取り組んでから提案していくべきものです。
仕事に新しく就く新人が、タイパを重視し、これまでの仕事のやり方や文化を否定してしまっては、引継ぎがうまくいきません。
新しい仕事を始める際はタイパを重要視せず、まずはトレーナブル*になって、しっかり仕事を覚える方が後々の効率が上がります。
企業側は、就活に取り組む姿勢を見て、入社後の仕事に臨む姿勢をシミュレーションしています。企業文化に馴染めないと感じれば、そこではじかれてしまうケースもありえます。
逆に就活時に、タイパを重視しない姿勢を見せることで、採用につながる可能性が高くなることがあるかもしれません。
実は、こうした「就活時のタイパの弊害」に関する意見は、学生側のアンケートでも同じ意見が出ています。就活での行き過ぎたタイパ重視は、企業側と学生側、双方にとってマイナスになる可能性があるようです。
*新人教育や職業訓練に対し、「素直に耳を傾けて、自分の中に取り入れてみようとする姿勢」のことをトレーナブルと言います。
古い時代の方法にも利点がある
ところで仕事や勉強において、古くて一見非効率な方法は本当に無駄しかないのでしょうか。
そんなことはありません。古い時代のやり方を取り入れることで、定着し身につくことも多いはずです。
例えば、勉強アプリの動画を観るだけよりも、大事なことをノートに書いてまとめる、文章を声に出して読む方が脳に定着しやすいといわれています。「古い時代のやり方は効率が悪い!」といって悪者にせず、書いたり読んだりしながら脳を刺激することで、パフォーマンスを高めましょう。
タイパラビリンスにはまらないための4つの対処法
現代社会は様々な物や情報で溢れており、時間に追われて過ごすことも多くなってきています。タイパを重視することで無駄な時間を削ることができますが、やり過ぎるとかえって自分が追い込まれてしまうため注意が必要です。
ここからは、行き過ぎたタイパ重視によって陥りやすい問題への対処法についてみていきましょう。
ワークライフバランスの本質を理解する
ワークライフバランスを整えるためには、タイパを求めすぎる必要はありません。人生のすべてにタイパを求めると、生き方が無機質なものになってしまいます。
プライベートを充実させるためには、タイパを良くして余った時間を有効に使いましょう。「どのくらい無駄な時間を削減するか」よりも「余った時間に何をして過ごすか」によって生活の楽しさが変わってきます。
具体的な目的の明確化
タイパを重視することは、限られた時間を有意義に過ごすための手段と考えましょう。タイパを重視すること自体が目的になってしまうと、時間を削減することに追われてしまい、ただただ疲れてしまいます。
例えば、旅行をするときは、遠回りすること自体が楽しみに繋がることもあります。景色をのんびり楽しんだり、目的地までの行程を楽しんだりしながら、密度の濃い時間を送りましょう。
古い時代の方法を活用
「流行は繰り返す」といわれています。つまり、古い時代の方法や考え方が現代に活きることもあるのです。
例えば、時間をかけて行動することの良さを表したことわざの一つに「良い花は後から」が挙げられます。この言葉には、焦って先に花を咲かせるよりも、後から花を咲かせる方がきれいになるといった意味があります。
つまり、タイパを重視して焦って行動してもあまり利益にならず、じっくり考えて行動した方が良い結果をうむ場合があるということです。
短時間で結果が出せなくても、落ち込むことはありません。時にはじっくり行動した方が、良い結果が得られると考えましょう。
頭を無にすることの重要性
生活の全てにおいて、タイパを重視する必要はありません。たまにはボーっと過ごして、頭と身体をリラックスさせましょう。
仏教の世界では、頭の中をリセットするために座禅を組んだり写経をします。たまにはタイパを考えず、周囲が自然あふれるお寺に出かけてみるのも良いですね。
頭をスッキリさせるためには、深呼吸もおすすめです。仕事の合間に深呼吸をしてリフレッシュすると、仕事の効率アップにも繋がります。
まとめ
タイパを重視した生活は、効率よく時間を使うことができてお得なイメージがあります。しかし、全ての物事をタイパ最優先で行うことには限界があります。
日々の暮らしを充実させたいと考えている方は、タイパ重視によるメリット・デメリットについて、改めてチェックしておきましょう。
タイパのメリットとデメリット、そしてそれを乗り越える方法
タイパを重視する主なメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
- 効率を意識して行動する姿勢が評価される
- 仕事や勉強とプライベートを両立できる
一方、タイパを重視し過ぎるあまり次のような弊害が生まれることもあります。
- 表層的な情報しか得られない
- 人間関係を築くことができず、仕事が上手くいかない
- 勉強やスキルアップが不十分になってしまう
- 時間に追われる生活に疲れてしまう
タイパ重視によるデメリットを克服するためには、タイパに追われる生活から一旦離れてみることが大切です。仕事や勉強の合間にボーっと過ごすことで、頭と身体をリフレッシュさせてパフォーマンスを上げてみましょう。
社会人や学生、就活生が知っておくべきこと
就活でも、タイパを重視して企業の情報を効率よく手に入れたいと考える人は少なくありません。
しかし、焦って表面的な情報しか入手せずに就活に挑んでも、なかなか就活が上手くいかず内定が得られないのでは本末転倒です。時にはタイパを重視せず、じっくり就活に集中する方が希望している企業への内定に繋がる場合もあるでしょう。
一見遠回りに感じる勉強や自分磨きは、将来のスキルアップに役立ちます。タイパをそこそこ重視しながら、余った時間を自分自身に投資して、より良い毎日を過ごしましょう。
▼参考
「2024年卒マイナビ企業新卒採用予定調査」
(https://www3.nhk.or.jp/news/special/news_seminar/syukatsu/syukatsu1072/)