利回りとは? 利息・利子との違いや計算方法などを簡単に解説
利回りと利息・利子との違いを説明できるでしょうか。利回りに関する知識は、資産の運用や、住宅ローンの借り方を有利にするうえで重要です。この機会に、利回りとは何かについての知識を押さえるとともに、利回りの計算方法などについても学びましょう。
利回りとは
はじめに、利回りとはどんな意味か、どんなときに使用するのかを押さえておきましょう。
利回りの定義
利回りとは、投資金額(元本)に対する収益の割合のことです。利回りは毎年受け取る利息はもちろん、購入時と売却時の差額(売却損益)なども含めた総合的なリターンを指します。元本や運用期間が同じなら、利回りが大きい金融商品を選ぶことで、より大きなリターンが期待できます。
単に「利回り」といった場合、1年当たりの平均利回りのことを指します。よって「年平均利回り」や「年利」とも表現します。
年利(利回り)の計算は次のように行います。利回りは単利とします。
年利(%)=利益の合計÷運用期間÷元本×100
利回りの種類
現在は「年利」がよく用いられますが、「月利(げつり)」「日歩(ひぶ)」という単位もあります。
月利は1か月当たりの利回りで、現在でも質屋において使われます。質屋営業法で、上限金利が年利109.5%(うるう年109.8%)と定められているのは、もとが月利9%とされていたことに由来します(9÷30(日)×365(日)=109.5%)。
日歩は1日当たりの利回りです。日歩基準の金利計算は、1日ごとの短期取引の計算に便利なことから、日本では数十年前まで広く利用されていました。実際に、日本銀行が民間銀行へ貸し出すときの金利である「公定歩合」は1969年に切り替わるまでは日歩で表示されていました。
利回りはどんなときに使う?
利回りの考え方が役に立つのは、「有利な金融商品を選ぶとき」や「運用実績を評価するとき」です。前述の年利を求める式から、次の式を導くことができます。
利益の合計=元本×年利(%)×運用期間(年)÷100
たとえば、5%の年利で100万円を1年間運用した場合は、「100万円×5%×1年÷100=5万円」と計算して、その金融商品から得られる利益の合計が5万円とわかります。
つまり、利益を最大化したいなら、「年利」「運用期間」「元本」を最大化する必要があるということです。運用期間や元本をふやすのは簡単ではありません。そのため年利(=利回り)を重視することが、金融商品選びには重要となるでしょう。
利回りと混同しやすい用語を解説
次に、利回りと混同しやすい用語について、それぞれの相違点や使い方の違いを解説します。
利回りと利息・利子の違い
まず、利息と利子は基本的に同じ意味です。実際に、金融庁が公開している「高校向け 金融経済教育指導教材」(2022年3月17日)には次の記載があります。
「利子(利息)とは、借りたり貸したりしたお金に、一定の割合で支払われる対価(金額)のことです。」
ただ、「利息制限法」「貸金業法」など、金融関係の法律では「利息」を用いることが一般的です。一方で、「所得税法」では利子税や利子所得など「利子」を用いており、扱われる法律によって違いがあると言えます。
利回りとの違いとして、利回りは割合(%)で表される一方、利息・利子は金額で表されるという表示方法の違いがあります。
利回りと金利・利率の違い
利回りとよく似た言葉に、「金利・利率」もあり、利回りと同様に割合(%)で表されます。また、一般的に1年間あたりのリターンを表す点でも、利回りと共通しています。
ただし、金利・利率は、あくまで「利息の割合」を表すものです。利回りは利息だけでなく、売却損益などを含む点が異なります。
単利と複利
利回りを正しく測るには、単利と複利の考え方を理解しておくことが重要です。単利の商品と複利の商品とでは、同じ利率でも利息がまるで違ってきます。ここでは、単利計算と複利計算の方法を解説します。
単利計算の方法
単利計算で得られる利息を、式に表すと「元本×利回り」です。常に同じ元本をもとに利息が決まります。
つまり単利とは、運用によって資金がふえても、利息がつく基準が当初の元本から変わらない仕組みです。利息は再投資されないため、投資効率は良くありません。
次のようなものが代表的な単利の商品です。
- 預入期間3年未満の定期預金、普通預金
- 国債や社債
- 毎月分配型の投資信託 など
複利計算の方法
複利計算を式に表すと「(元本+前年までの利息)×利回り」です。利息を翌年の元本に組み込む(年複利の場合)ため、受け取る利息の金額は年々ふえていくことになります。
つまり、複利とは利息に対しても利息がつく仕組みです。よって、複利の商品と単利の商品を比べた場合、同じ利率・運用期間なら、複利の方がより多く利息を受け取ることができます。
次のようなものが代表的な複利の商品です。
- 預入期間3年以上の定期預金
- MMF(マネー・マネジメント・ファンド。株式を一切組み込まない「公社債投資信託」の1つ)
- 分配金再投資型の投資信託 など
株式・投資信託の利回り
株式・投資信託の利回りを計算する方法を解説します。株式・投資信託は、売却損益と配当金(投資信託では分配金)を収益として計算します。計算式は次の通りです。
利回り=(売却損益+配当金または分配金)÷運用年数÷元本×100
たとえば、株式の投資元本が100万円で、1年間運用し、配当金を1万円受け取り、売却益が5万円だったときの利回りを考えてみましょう。「(5万円+1万円)÷1年÷100万円×100=6%」の計算式から、利回りは6%となります。
株式の場合は、株主優待も考慮します。なお、投資信託の運用実績を見るには、投資開始時点から現時点までの利回りである「トータルリターン」を確認しましょう。年率に換算して、平均すると1年あたりいくらの利回りで運用できたかがわかります。
債券の利回り
債券とは、国や企業などが資金を借り入れるために発行する有価証券です。国が発行すれば国債、地方公共団体であれば地方債、企業なら社債といいます。債券にはあらかじめ満期(償還日)が定められており、満期時点の保有者にお金が払い戻されます。このときの金額を「償還価額」といいます。
債券の利回り計算は、購入・売却のタイミングで方法が異なり、「応募者利回り」「最終利回り」「所有期間利回り」「直接利回り」などがありますが、よく使われるのが最終利回りです。
最終利回りとは、すでに発行済みの債券を購入し、満期まで保有した場合の利回りです。つまり、購入から満期までに受け取れる利息と償還差損益(償還価額と購入価額の差)の合計を計算し、1年当たりの平均利回りを算出します。
最終利回りは次のように計算します。なお、表面利率とは、債券の償還価額に対して毎年支払われる利息の割合を意味します。
最終利回り(%)={利息(※)+(償還価額-購入価額)÷残存年数}÷購入価額×100
※利息=償還価額×表面利率
たとえば、表面利率2%(利息は2円)、償還価額100円、購入価額95円、取得時の残存年数(満期までの年数)が5年の債券の場合、最終利回りは以下のように計算します。
{2円+(100円-95円)÷5年}÷95円×100≒3.16%
つまり、表面利率の高い商品を、なるべく低い購入価額で入手できれば、最終利回りは大きくなります。
不動産の利回り
不動産投資には、表面利回り(グロス利回り)と実質利回り(ネット利回り)があり、どちらも重要な指標です。これらの意味と、計算方法を解説します。
表面利回りの計算式
不動産投資の表面利回りは、年間の賃料収入を物件価格で割ったものです。不動産のおおまかな収益力を見る指標で、多くの物件情報では表面利回りしか記載されていないので、最初に参考にする数値は表面利回りです。
表面利回りは次のように計算します。
表面利回り(%)=年間の賃料総額÷物件の購入価格×100
実質利回りの計算式
不動産投資の実質利回りとは、年間の賃料収入から年間の諸経費(管理費、固定資産税、修繕積立金、保険料など)を差し引いた数字を、物件価格に購入時の諸経費(不動産仲介手数料、登記費用など)を加えた数字で割ったものです。
諸経費を考慮するため、一般的には実質利回りのほうが表面利回りよりも低くなります。不動産投資には諸経費が必ずかかるため、実質利回りのほうが正確な収益力を表していると言えます。
実質利回りは次のように計算します。
実質利回り(%)=(年間の賃料総額-年間の諸経費)÷(物件の購入価格+購入時の諸経費)×100
利回りについて理解し、投資に役立てよう
金融や投資に関する用語は混同しやすいものが多く、種類も多岐にわたるため、わかりづらく思われるかもしれません。ただ、利回りの知識を身につけることは、有利な金融商品を見つけるためには必要不可欠です。この機会に、しっかりと用語の定義を理解しましょう。用語を正しく理解するには、それぞれの相違点を押さえることが重要です。
▼参考資料
- 投資信託の基礎知識|利回りとは何だ?購入前に知っておくべきポイント(SMBC日興証券株式会社)
- 昭和二十五年法律第百五十八号質屋営業法(e-Gov法令検索)
- 高校向け 金融経済教育指導教材の公表について(金融庁)
- 利率と利回りの違いって何?(日本証券業協会)
- 「複利」の力で効果アップ!単利との違いや複利運用のメリットを紹介(大和証券株式会社)
- 投資信託の利回りとは?計算方法や商品の賢い選び方をご紹介(大和証券株式会社)
- 債券とは?(岡三証券株式会社)
- 最終利回り(さいしゅうりまわり)(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)
- 不動産投資の「利回り」とは?計算方法から平均相場、注意すべき点まで徹底解説(プロパティエージェント株式会社)
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