介護保険で「できること」と「できないこと」|できないことへの対処法
介護が必要になり自立した生活が困難となった場合に利用できるのが、公的介護保険サービスです。介護が必要になった、もしくは高齢者の一人暮らしの親を持ち、介護保険サービスでどのような支援を受けられるか気になる人もいるのではないでしょうか。
公的介護保険とは、40歳以上の人が介護保険料を納め、要支援・要介護状態になった際に訪問介護やデイサービスなどの介護サービスを受けることができる制度です。
公的介護保険制度は、自立支援を基本理念としています。そのため、公的介護サービスについて、すべてのサービスを無制限に受けられるわけではなく、介護保険制度の趣旨から外れるサービスは受けられません。公的介護保険だけでは心配という方には、自治体や民間企業が提供する高齢者支援サービスや要介護になったときの備えとして民間の介護保険もあります。
この記事では、公的介護保険における訪問介護サービスでできること、できないことを紹介したうえで、公的介護保険でできないことにどう対処するかを解説します。
介護保険でできることは?
公的介護保険に基づく訪問介護サービスには、主に「身体介護」と「生活援助」があります。国が定めた介護職員初任者研修課程を受講し、修了した訪問介護員(ヘルパー)が、利用者宅を訪問し、サービスを提供します。ここでは、訪問介護サービスでできることについて解説します。
身体介護
介護サービスでは、ケアマネージャーが作成したケアプランに沿って介護ヘルパーが介助を行います。
このうち身体介護は、食事や入浴などの際、利用者の身体に直接触れる介助サービスです。日常生活において、身体のセルフケアが難しい場合に、世帯や家族の状況に関係なく利用できるサービスです。
【身体介護で主にできること一覧】
介護の項目 | 介護保険でできること |
---|---|
食事・薬 | ・食事介助・見守り ・配膳や後片付け ・服薬の見守り・体温測定・血圧測定 ・(自立を支援することを目的として)本人と一緒にする調理 |
入浴 | ・入浴介助 |
排せつ | ・トイレの介助(排泄介助・移動介助・誘導) ・トイレの見守り ・採尿器や差し込み便器の介助 ・失禁のお世話・おむつ交換 |
整容 | ・洗顔・洗髪の介助 ・口腔ケア ・爪切り・髭剃り・耳掃除 ・着替えの介助 |
寝起き・体位変換 | ・起床の介助 ・就寝の介助 ・体位変換(自力で体の向きを変えられない場合に位置や向きを変える介助) |
通院と外出 | ・通院時の介助 ・通院等乗降介助・外出介助※ |
※外出介助は、日常生活に必要な買い物のほか、役所や銀行での手続き、通所介護施設や介護保険施設の見学のための外出で利用できます。冠婚葬祭や外食を目的とする外出には利用できません。
生活援助
生活援助は、調理や洗濯など日常生活の援助を利用者の代わりに行うサービスです。
本人が一人暮らしで家事を行うことが困難な場合や同居家族等が傷害や疾病、その他やむを得ない事情で家事ができない場合に利用できます。民間の家事代行サービスではありませんので、公的介護サービスのなかでできることが決められています。
【生活援助で主にできること一覧】
介護の項目 | 介護保険でできること |
---|---|
洗濯 | ・利用者の衣類の洗濯 |
掃除 | ・利用者が主に過ごす居室の掃除 |
調理 | ・一般的な食事の調理 |
買い物 | ・日常生活に必要な買い物 |
ゴミ出し | ・利用者が主に利用する居室のゴミ出し |
衣類の管理 | ・洗濯した衣類の収納 |
外出 | ・生活費の引き出しの同行 |
介護保険でできないことは?
介護保険サービスは、介護保険法に基づく公的サービスですので、できないこと、してはいけないことが決められています。ここでは、公的介護保険では受けられないサービスについて解説します。
本人以外の援助
介護保険法によって、介護保険サービスを受けられる対象は利用者のみと規定されています。そのため、同居する親族など利用者本人以外へのサービスはできません。
また、利用者がいない間にサービスを利用することはできません。利用者本人が外出中に行う清掃や調理などは、本人のために行うものであっても介護保険の対象となりません。本人以外に行うサポートの具体例は、以下のようなものです。
【介護保険でできない本人以外のサポートの例】
介護の項目 | 介護保険でできないこと |
---|---|
洗濯 | ・利用者以外のための洗濯 |
掃除 | ・利用者が使用していない部屋の掃除・模様替え |
料理 | ・利用者以外の人が食べるための調理 |
買い物 | ・利用者の日常生活に必須ではない物の購入(嗜好品などの購入) |
ゴミ出し | ・利用者以外のゴミ出し |
その他 | ・ペットの世話 |
日常生活に支障が出ない行為
介護保険制度に基づく支援は、本人が問題なく日常生活を送るための範囲と定められています。これが理由で、日常生活に支障が出ないと判断される行為や日常的な家事の範囲を超える行為は対象となっていません。以下に、具体例を示します。
【対象にならない日常生活以外のサポートの例】
介護の項目 | 介護保険でできないこと |
---|---|
掃除 | ・自宅の窓やベランダ、網戸、換気扇の掃除 |
料理 | ・特別な調理(おせち料理やおもてなし料理など) |
外出や通院 | ・散歩の付き添い※ケアプランに位置づけられるものは除く |
その他 | ・留守番 |
なお、医師や歯科医師、看護師以外の者は医療行為をすることはできません(医師法17条)。そのため、ヘルパーは医療行為に相当するサービスはできません。
たとえば、軽微な切り傷や擦り傷箇所のガーゼの交換や湿布の貼り付け、点眼薬の点眼はできますが、インスリン注射や服薬管理など医療行為にあたるものは訪問介護サービスの対象外となります。
介護保険でできないことへの対処法
ここまで説明してきたように、公的介護保険で利用できるサービスは幅広くあるものの、介護保険制度の基本理念である「自立支援」に適さないサービスは利用できないものがあります。
では、公的介護保険で受けられないサービスについて、どのような対処法があり、備えができるのでしょうか。
介護保険外サービスを利用する
公的介護保険で受けられないサービスについて、市区町村や民間企業が提供している生活支援サービスを利用する方法があります。
住んでいる市区町村が独自に行う生活支援サービスには主に、一人暮らしの高齢者や要介護者に対する、配食や移送などのサービスがあります。利用できるサービスや料金、利用条件は、自治体によって異なりますので確認が必要です。
その他、シルバー人材センターや社会福祉協議会による生活支援サービスや民間企業が提供する配食・家事代行サービスなどもあります。ただし、自己負担が1~3割である公的介護保険サービスと異なり、介護保険外のサービスは全額自己負担となります。
介護が必要なときのために備えておく
民間の介護保険で、公的介護保険ではカバーできないサービスに備えることもできます。民間の介護保険は、契約内容に定める要介護状態となった場合に、一時金や年金(介護年金)もしくは両方を併用して現金を受け取れるものです。
介護が必要となった場合、金銭面の備えになりますので、全額自己負担の生活支援サービスなども利用しやすくなります。保険期間が決まっている定期タイプと一生涯保障が続く終身タイプがあり、所定の要介護状態になると保険料の支払いが免除されるものもあります。
公的介護保険で「できること」「できないこと」を明確にして民間の介護保険を検討しよう
公的介護保険による身体介護、生活援助サービスは、自己負担1~3割で日常生活におけるさまざまな場面で利用できるサービスです。ただ、介護認定を受けている利用者本人しか利用できず、日常生活に必要な行為以外には利用できないという制約もあります。
年齢を重ねて介護サービスが必要となっても、できる限り自由に自分らしく生きるためには、公的介護保険ではカバーできないサービスに備えておくことをおすすめします。
民間の介護保険で備える場合、介護費用を収入や貯蓄でどれくらいカバーできるかは人それぞれです。また、保険金の受取方法や給付要件も商品によってさまざまなため、保険に詳しい専門家に相談するのが良いでしょう。
ソナミラでは、保険の専門家による無料相談を承っております。介護保険についても、公的介護保険サービスを踏まえ、一人一人の状況をしっかりお聞きしたうえでアドバイス・ご提案させていただきます。
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