つみたて投資枠の銘柄はいくつ買う?複数商品を購入する際の注意点
NISAを始めようと考えている人のなかには、「投資対象とする銘柄はいくつがいいのだろう?」
「投資先が異なる対象銘柄を組み合わせたほうがいいの?」と疑問を持たれている人もいるのではないでしょうか。
この記事ではNISAでいくつの銘柄を購入すべきか、また複数購入する場合のメリットや注意点を解説します。具体的な銘柄のポートフォリオ例も紹介しますので是非参考にしてください。
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【NISA】つみたて投資枠の銘柄はいくつ買うべき?
つみたて投資枠の対象となっている投資信託商品は288本あり、それぞれの銘柄を通じて株式から債券などに投資することができます(4月25日時点)。では、そのなかでいくつの銘柄を購入すべきなのでしょうか。
【出典】
金融庁「つみたて投資枠対象商品」(対象資産別)
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/products/20240425/26.pdf
結論からいえば、投資対象の異なる複数の銘柄を保有することも考えられますが、1つの銘柄でも問題ありません。なぜなら、NISAが投資対象とする投資信託は、それぞれのファンドを通じて国内外の株式や債券などに分散投資する商品であるため、複数購入しなくても分散投資の効果が得られているためです。
たとえば、三菱UFJアセットマネジメントが運用する投資信託に「eMAXIS 全世界株式インデックス」という商品があります。この商品は、日本を除く先進国および新興国の株式など、世界中の株式に広く投資する商品です。つまり、1つの銘柄でも異なる株式や地域に投資することでリスク分散を図ることができます。
また、つみたてNISAは長期投資を前提としたとする金融商品を取り扱っていますが、途中で積立額や運用する銘柄を変更することも可能です。銘柄を絞り、管理や運用の手間を少なくすることで、長期の運用も続けやすくなります。
ただし、投資目的やリスク許容度によって購入することが望ましい銘柄数が変わることもあります。楽天証券の調査では、保有する銘柄数1~2本の割合が全体の65%を占めるものの、4本以上保有する人も19%います。
【出典】
楽天証券「みんなどうしてる?投資の実態調査(4)投資信託の選び方」
https://media.rakuten-sec.net/articles/-/42110#google_vignette
つみたて投資枠で複数銘柄を購入するメリット
では、つみたて投資枠で複数の銘柄を購入する場合、どのようなメリットが考えられるのでしょうか。
リスクをより分散できる
複数の銘柄を購入するメリットは、選び方次第でリスク分散できる点です。
それぞれの投資商品の運用方針や、ベンチマークは異なります。そのため、複数の銘柄を購入することで、一部の銘柄が値下がりしても、他の銘柄が上昇していれば、全体の資産状況でみたときに値下がりした影響を抑えられる可能性があります。
つまり、投資対象を広く分散させることで、より高い分散投資の効果が期待できるということです。いくつか分散投資の具体例を紹介します。
銘柄名 | eMAXIS Slim 先進国株式インデックス | はじめてのNISA・新興国株式インデックス |
---|---|---|
投資先 | 日本を除く先進国株式 | 新興国株式 |
運用会社 | 三菱UFJアセットマネジメント | 野村アセットマネジメント |
※2024年5月10日時点
先進国のインデックス投資信託と新興国のインデックス投資信託を組み合わせる分散投資例です。先進国株式は、約7割を米国株式が占めるなど欧米中心の先進国の株式が投資先となっています。
一方、新興国株式は、香港やインド、台湾、韓国などが上位の投資先となっています。新興国は、一般的に先進国と比べてハイリスクハイリターンと考えられますが、組み合わせることで全体のリスク分散を図ることができます。
また、投資対象国で政治、経済の状況の変化によって株式や債券市場に混乱が生じる場合のいわゆるカントリーリスクに対するリスクヘッジを期待することも可能です。
銘柄名 | eMAXIS Slim 全世界株式インデックス | DCニッセイワールドセレクトファンド(債券重視型) |
---|---|---|
投資先 | 日本を含む先進国、新興国株式 | 国内債券・外国債券(約70%) |
運用会社 | 三菱UFJアセットマネジメント | ニッセイアセットマネジメント |
※2024年5月10日時点
全世界株式インデックス投資信託と国内および外国の債券を主要な投資先とする投資信託の組み合わせです。株式と債券という異なる値動きをする商品に投資することでリスク分散できます。
銘柄名 | eMAXIS Slim 先進国株式インデックス | つみたて日本株式(TOPIX) |
---|---|---|
投資先 | 日本を除く先進国株式 | 東証株価指数(TOPIX)に採用されている日本株式中心 |
運用会社 | 三菱UFJアセットマネジメント | 三菱UFJアセットマネジメント |
※2024年5月10日時点
先進国のインデックス投資信託と日本の東証株価指数(TOPIX)をベンチマークとする日本株式の投資信託の組み合わせです。
日本を除く全世界株式と日本株全体の動きを把握するTOPIXを組み合わせることで分散投資の効果を得ることができます。日本株を中心に投資する一方で、同時に高いリターンも狙いたい場合などに考えられる組み合わせです。
分散投資の方法としては、国・地域の分散や投資対象の分散のほか、円やドルなど通貨の分散、投資するタイミングや投資期間を分散させる方法があります。
組み合わせによっては信託報酬を抑えられる
銘柄の組み合わせ方によっては、分散投資の効果のほか、信託報酬を抑えられる場合もあります。
信託報酬とは、投資信託を運用、管理してもらうためにかかる手数料です。ファンドを運用する運用会社や銀行、証券会社などの販売会社と、信託銀行へ報酬として支払われます。投資信託を保有し続ける間は、間接的に負担する費用ですので、信託報酬が低い商品を選ぶことも大切です。
つみたて投資枠の投資対象商品は、長期、積立投資に適していると金融庁が判断したものに限定され、信託報酬についても1.5%以下であることが条件です。信託報酬は、銘柄によって異なりますので、信託報酬が低い銘柄と組み合わせることで投資にかかるコストを抑えられる可能性があります。なお、NISAのつみたて投資枠では購入時手数料はかかりません(ノーロード)。
つみたて投資枠で複数銘柄を購入する際の注意点
つみたて投資枠で複数銘柄を購入することにはメリットがありますが、同時に注意しなければならない点もあります。
銘柄に対する基礎知識が必要となる
複数の銘柄を購入する場合、それぞれの銘柄に関する基礎知識が必要です。似た運用成績の銘柄や投資対象地域が似ている銘柄同士など、組み合わせ方によっては分散効果が期待できない場合もあるため、それぞれの特徴を踏まえて購入することが大切です。
分散効果が期待しにくい組み合わせ例をいくつか紹介します。
銘柄名 | eMAXIS Slim 全世界株式インデックス | eMAXIS Slim 先進国株式インデックス |
---|---|---|
投資先 | 日本を含む先進国、新興国株式 | 日本を除く先進国株式 |
運用会社 | 三菱UFJアセットマネジメント | 三菱UFJアセットマネジメント |
※2024年5月10日時点
全世界株式と先進国株式インデックス投資信託の組み合わせですが、全世界株式インデックスの投資先の9割近くはアメリカを中心とした先進国の株式です、そのため、2つの銘柄を購入しても投資する商品、国に大きな違いはなく、リスク分散効果は薄いといえます。
銘柄名 | eMAXIS Slim 先進国株式インデックス | 米国株式インデックス・ファンド |
---|---|---|
投資先 | 日本を除く先進国株式 | 米国の証券取引所に上場されている株式 |
運用会社 | 三菱UFJアセットマネジメント | ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社 |
※2024年5月10日時点
先進国株式と米国株式インデックスの組み合わせです。先進国株式の約70%は米国株式を投資先としています。そのため、米国の上場株式を投資対象とし、中長期的にS&P500の動きに連動した投資成果を目指す米国株式インデックスの投資信託と組み合わせても、分散投資の効果は期待にしにくいといえます。
このように、それぞれの銘柄が投資対象とする国や商品、組み入れている割合なども理解したうえで複数の銘柄を購入しなければ、分散投資のメリットを得られない可能性がある点に注意が必要です。
運用益が小さくなる可能性もある
違う値動きをする複数の投資信託を購入することで、運用益が小さくなる可能性もあります。
そもそも、分散投資とは投資対象を広く分散させることによって、投資リスクを抑えることを目的とする方法です。ただ、投資対象を分散させることは、同時に収益性の変動幅を小さくすることにもつながります。1つの銘柄が値上がりしたとしても、分散投資によって投資金額に占める割合が小さくなれば、運用益もその分少なくなります。
つみたて投資枠で投資可能な年間の上限は120万円です。複数の銘柄に分散することで1つの銘柄の投資額が減り、得られるリターンが小さくなる可能性も踏まえて判断することが大切です。
NISAのつみたて投資枠銘柄をいくつ買うかは、投資スタイルととれるリスクによって判断しよう
NISAのつみたて投資枠では、基本的に投資する銘柄を1つだけにしても、分散効果を得られるので問題ありません。ただし、投資スタイルや許容できるリスクによっては、複数の銘柄を保有することも考えられます。
複数の銘柄を購入するときは、その銘柄が投資対象とする国や地域、商品、運用方針を目論見書などでしっかり確認し、分散投資効果や収益性への影響を検討することが大切です。
つみたて投資枠の対象商品だけでもさまざまな銘柄から選択できますので、どの銘柄を選ぶべきか分からない場合は、プロに相談することをおすすめします。
ソナミラでは、新NISAに関する疑問や悩みについても、無料でオンライン・対面どちらでも気軽に相談できます。土日祝日も20時まで何度でも相談でき、無理な勧誘はありませんのでお気軽にご連絡ください。
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